研究課題/領域番号 |
16K05882
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
當摩 哲也 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (20415699)
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研究分担者 |
桑原 貴之 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (80464048)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | π-π相互作用 / d-π相互作用 / バルクヘテロ / 分子配向 |
研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池において、バルクへテロ層は電荷分離界面が大きく電荷分離効率が良いが、分子がランダムに混ざるため構造制御が難しい。我々は、CuI上にp型半導体として亜鉛フタロシアニン(ZnPc)を製膜し、その上に共蒸着法によりバルクヘテロi層(ZnPc:C60)、n型半導体としてC60を順に製膜することで太陽電池性能が向上することを報告している。CuIを挿入し、共蒸着膜内のZnPc分子の配向を制御することで変換効率が向上したと考えられるが、実際に共蒸着膜内の配向状態は明らかになっていない。本研究では、in-situ条件で測定可能である赤外反射吸収分光(IR-RAS)法を用いることで、共蒸着膜内部のZnPc分子の配向を調査し、共蒸着膜内の構造の決定を試みることを目的としている。 PEDOT:PSSを塗布したITO基板上に真空蒸着法により無機半導体CuIを5 nm製膜し、その後ZnPc(20 nm)を製膜した。その上に共蒸着法によりZnPcとC60を製膜し、蒸着中にin-situ条件でIR-RAS測定を行い得られたIRスペクトルにより配向角を算出した。その結果、ITO上及びITO/PEDOT:PSS上の共蒸着膜において配向角は60度程度の立った配向であるのに対し、ITO/PEDOT:PSS/CuI上では下地との界面近傍(10 nm以下)において配向角が比較的寝た配向である45度程度となった。これは、CuIのd軌道とZnPcのπ軌道の間に強い相互作用が生じるために寝た配向を示すと考えられる。次に、p-i-n型構造太陽電池における共蒸着膜中のZnPc分子の配向を調査した。p-i-n型構造の共蒸着膜ではCuIを挿入したとき、配向角がごく界面近傍(5 nm)で38度程度であり、より寝た配向性を示した。以上の研究により、d-πの相互作用よりπ-πの相互作用が大きいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子-分子の相互作用と基板-分子の相互作用を明らかにすることを目的としており、相互作用を明らかにすることができたのは大きな成果である。しかし、まだ太陽電池性能への影響について厳密な相関を得てはいないため今後の課題となる。さらに、蒸着ではなく塗布への応用にも着手する必要があり、乗り越えるべき課題がまだ存在している。
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今後の研究の推進方策 |
太陽電池性能への影響について厳密な相関を得てはいないことと、蒸着ではなく塗布への応用にも着手していないことが課題であり、乗り越えるべき課題がまだ存在している。今後の推進方針として上記の課題を検討し、太陽電池の高性能化に寄与できる基礎技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
塗布製膜装置(スピンコーターミカサMS-B100)と塗布製膜対応IRRAS サンプルホルダーに関しては既存の測定装置を活用することで対処した。さらに、材料使用量の低減ならびに他予算での旅費利用により助成金の残余が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、研究の展開を大きく図るために材料の多様化を行う。これは、申請書では無機半導体や有機半導体の種類を6種類以上と想定しているが、その数を増やすことで探索する新規材料の幅を広げて太陽電池の高性能化に寄与する材料を開発する。
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