研究課題/領域番号 |
16K05886
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
橋本 拓也 日本大学, 文理学部, 教授 (20212136)
|
研究分担者 |
丹羽 栄貴 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (10707962)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 二酸化炭素吸収材料 / 吸収速度 / 化学熱力学 / 粒子微細化 / 液相合成法 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素吸収材料として注目されていたLi4SiO4について、液相合成法による試料粉末合成に成功した。平成28年度中に固相反応法および遊星型ボールミル粉砕で合成した試料は平均粒径2μmをきる粉末であったが、液相合成法で作製した粉末は遊星型ボールミル粉砕を経なくとも平均粒子径が2~3μmと十分に小さい粉末が得られることを明らかにした。本粉末のCO2吸収速度をCO2分圧0.1気圧と実用に近いガス雰囲気で評価したところ、固相反応法・遊星型ボールミル粉砕で作製した粉末よりも平均粒径が大きいのに係らず、より高い吸収速度を示すことを明らかにした。この原因を解明するために窒素ガス吸着特性を測定したところ、液相合成法で作製した粉末は固相反応法で合成した粉末よりガス吸着しやすいことが判明した。ガス吸着挙動の改善が起こった原因についてはSi溶液中に含まれていた微量のナトリウムの影響や表面形状の変化が考えられるが、確定はしていない。 他の材料についてはLi4TiO4の合成を試み、強還元雰囲気での熱処理により単相合成に成功した。本物質の二酸化炭素吸収特性を評価したところ、従来提案された反応式ではなく、単純にLi2CO3とTiO2に分解することを初めて明らかにした。 また従来我々がCO2吸収材料として提案してきたSrCeO3およびBaCeO3について、X線回折などで結晶構造・電子密度分布の解析を実施した。両者のCO2吸収速度の差が結晶構造の違いに伴う電子密度分布の変化で説明可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li4SiO4について平成28年度は固相反応法で合成した粉末の機械的な粉砕によって微細粒子の合成に成功し、CO2を吸収する温度・CO2分圧条件の明確化およびCO2吸収速度の改善に成功した。これらの成果をMaterials Research Bulletin誌に2報の論文としてまとめることが出来た。また液相合成法によって粒径の小さい試料の合成に成功、本物質が固相反応法・遊星型ボールミル粉砕で作製した粉末よりも高いCO2吸収速度を示すことを明らかにした。この原因については残留しているナトリウムのためか、表面形態の変化による吸着ガス量の増大のためかは不明ではあるものの、目標としていた「セラミックス合成法の改良による二酸化炭素吸収材料の開発」には前進した成果を挙げることができた。 またLi4TiO4、Li2CuO2など他の候補材料もLiを過剰に原料に仕込むことや強還元下での熱処理など工夫することによって、単相試料を得ることができ、二酸化炭素吸収特性を評価することができた。特にLi4TiO4については従来提案されていたCO2との反応式が間違いであり、単相の試料を用いると本物質はCO2吸収により単純にLi2CO3とTiO2の混合物となることを明らかにした。 またX線回折測定などによりSrCeO3とBaCeO3の結晶構造・電子密度分布を明らかにすることに成功し、前者のCO2吸収速度が後者よりも高いことが電子密度分布の違いで説明できることを明らかにできた。本成果はCO2吸収材料の探索にあたって道標となる知識が得られたものと評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
Li4SiO4については、不純物となる原料溶液中のナトリウムを低減させる方法の確立を目指し、単相の試料合成および二酸化炭素吸収特性の評価を目指す。あるいはナトリウムにより二酸化炭素吸収特性の向上が起こっている可能性もあるので、Li4-xNaxSiO4で表されるナトリウムイオン部分置換体が合成可能かどうかの検証を実施し、二酸化炭素吸収特性を評価、さらに機能が向上した試料の開発を目指す。 またLi4TiO4やLi2CuO2などの二酸化炭素吸収特性の評価には成功したものの、本物質系は還元雰囲気でないと副反応が起こるなどの問題が明らかになったので、他の物質系の合成および二酸化炭素吸収特性の評価を実施する。具体的にはLiNiO2、Li5FeO4、Li4AlO4などこれまでに空気中での合成が報告されているものを中心に探索を実施する。 またこれらの物質についてX線回折による二酸化炭素ガス下での結晶構造の温度変化や電子構造の評価も実施し二酸化炭素との反応特性挙動との相関の有無を解析し、吸収材料探索の指針を明らかにすることにもトライする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ディスカウントをしていただいての消耗品購入など、有効に使用する努力をした結果522円を余らせることが出来た。本金額は既受領金額の0.04%程度であるので問題はないと考えられる。 本金額は来年度の消耗品代として組み込ませていただく予定である。
|