研究実績の概要 |
1.原料となるビシクロピロールの縮環部位に臭素を1つあるいは2つ導入し、続いてカップリング反応することで、様々な置換基を持つビシクロピロールの合成に初めて成功した。得られた置換ビシクロピロールはそれぞれ、該当するテトラベンゾポルフィリンへと変換することができた。ビシクロピロールへの置換基導入の報告は極めて少なかったが、今回見出した合成法は汎用性に優れるため、縮環ピロールユニットを含む新規機能性有機材料開発に貢献するものと期待される。 2.従来合成が困難とされてきた5,15-非対称テトラベンゾポルフィリン類の合成に成功した。得られた非対称ベンゾポルフィリンをガラス基板上に塗布しその表面を電子顕微鏡で観察したところ、昨年度までに得られたもの(5-置換テトラベンゾポルフィリン、5,15-対称テトラベンゾポルフィリン)と大きく異なっていたが、化学的特性(UV, CV)にはほとんど差が無いことが分かった。 3.親水性置換基と疎水性置換基を併せ持つテトラベンゾポルフィリンの合成に成功した。導入するアルキル基を変化させることで、その水溶性を任意にコントロールすることができた。デバイス作成時に用いる基板の「ぬれ特性」に対応可能なほか、がん治療用光増感剤への応用が期待できる。 4.縮環ピロールを出発原料として用いることで、耐熱性に優れた新規染料の開発にも成功した。原料の縮環ピロールや導入する置換基を組み合わせることにより、可視領域に任意の吸収を持つ染料の合成が可能である。
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