近赤外領域に吸収および蛍光を示す色素は、有機太陽電池、分子イメージングなどへの応用が可能であるが、このような特性を示す色素の分子骨格は限られている。 本研究では近赤外領域に吸収および蛍光を示す新規な分子骨格を有する色素の開発を目指す。 近赤外領域(700 nm以上)に吸収を示す新規色素としてチオフェン縮環型BODIPY色素を開発し、色素増感太陽電池用増感色素への応用を行った。理論計算を用いて最適なHOMOおよびLUMOエネルギー準位を有するチオフェン縮環型BODIPY色素を分子設計し、実際に合成した。サイクリックボルタンメトリーにより酸化電位および還元電位を実験的に求め、合成した色素が熱力学的に増感色素として働くことを確認した。 合成した2つのチオフェン縮環型BODIPY色素は溶液中でそれぞれ783nmおよび812nmに最大吸収波長を示し、酸化チタン膜上でそれぞれ738nmおよび765nmに最大吸収波長を示した。開発した2つのチオフェン縮環型BODIPY色素を色素増感太陽電池用増感色素として評価した。共吸着剤、電解質、色素吸着量などの最適化を行った。その結果、2つのチオフェン縮環型BODIPY色素の最大IPCE値はそれぞれ790 nmで18.1%、810 nmで12.3%、変換効率はそれぞれ1.40%および1.23%であった。すなわち、チオフェン縮環型BODIPY色素が有用な色素増感太陽電池用近赤外増感色素であることを明らかにした。
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