研究課題/領域番号 |
16K05895
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田嶋 智之 岡山大学, 環境生命科学研究科, 講師 (90467275)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / 分散技術 / 超分子複合体 / 無機ハイブリッド |
研究実績の概要 |
①太い単層カーボンナノチューブ超分子複合体の分散技術の確立 CNTsを光材料として利用する上で、ナノ炭素材料同士の凝集はマイナスの要素として働くことが多く、光によって励起したエネルギーがすぐに消光されてしまうため、1本1本をほどき、孤立分散させる必要がある。 項目① 分散剤の合成 1,10-ビス(デシロキシ)デカンをコアに持つデンドリマー(分散剤)を合成し、単層カーボンナノチューブの分散実験を行った。太い半導体性のSWCNTs(SOチューブ:名城ナノカーボン社 直径1.4 nm、SWCNTs: ZEON社 直径1.8 nm,MEIJO eDIPS名城ナノカーボン社 2.0 nm)に関しても分散実験を行い、Ramanスペクトルや二次元蛍光スペクトルにより同軸ケーブル構造中のCNTを確認し、AFM、およびTEMによる構造を確認した。また、TGAによるCNTsの表面修飾率を見積もった。また、多層カーボンナノチューブのような太いCNTを分散させることにも成功した。 ② 光酸素の発生触媒として有用な複合化BiVO4との複合化 項目①で得られた成果を礎に、無機材料との複合化について検討した。一般的に、単層カーボンナノチューブと無機材料とを複合化する際には、単層カーボンナノチューブの表面に化学修飾と施し、CO2Hなどの官能基をつける必要があるが、デンドリマー型分散剤の特性を活かし、単層カーボンナノチューブの表面を傷つけることなく、炭酸カルシウム, 塩化カルシウム,ハイドロキシアパタイトなどの無機材料との複合化に成功した。更に、BiVO4の合成法を参考(Chem Lett 2002, 660)に、単層カーボンナノチューブ超分子複合体の水溶液をマトリクスに、Bi(NO3)3とNH4VO3を硝酸存在下で加えた後、尿素を加え、BiVO4の結晶化について着手し始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究計画であった「太い単層カーボンナノチューブ超分子複合体の分散技術の確立」に関しては、順調に研究が進んだため、Canadian Journal of Chemistryに次の題名の論文成果発表をした。Shunichi Nishimura, Tomoyuki Tajima, Tatsuki Hasegawa, Yutaka Takaguchi*, Yuya Oaki, Hiroaki Imai, "Synthesis of poly(amidoamine) dendrimer having a 1,10-bis(decyloxy)decane core and its use in fabrication of carbon nanotube/calcium carbonate hybrids through biomimetic mineralization"
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今後の研究の推進方策 |
光酸素の発生触媒として有用な複合化BiVO4との複合化 BiVO4の合成法を参考(Chem Lett 2002, 660)に、単層カーボンナノチューブ超分子複合体の水溶液をマトリクスに、Bi(NO3)3とNH4VO3を硝酸存在下で加えた後、尿素を加え、BiVO4の結晶化を行い、得られたハイブリッドの構造決定を行う。RamanスペクトルによりCNTの存在の確認を確認し、SEMによる構造確認する。TGAによるCNTsの含有率の決定やXRDによるBiVO4の生成の確認もあわせて行う。SWCNT/無機ハイブリッドについて、可視光を用いた水の分解による酸素生成量をガスクロで定量し、可視光照射下での水素発生量、および、単色光照射下での酸素生成の量子収率を求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該未使用額は補助事業を誠実に遂行した結果生じたものである。物品費に関しては、開発する新規分散剤の合成方法や精製方法を創意工夫することで、低価格の試薬からステップ数の少ない合成経路で目的の物質を開発することに成功したため、当初計画より使用経費の節約につながった。また、旅費については、研究計画が順調に進んだため、研究調査のための旅費の節約につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定よりも順調に研究が遂行されていることから、創意工夫することで生じた差額の一部については、論文成果発表のための英文校正費や論文別刷代に使用する。さらに高価な消耗品(単層カーボンナノチューブなど)の購入に使用することで、CNT/無機材料ハイブリッドの作成に関し、従来計画以上の最適化条件を検討することを計画しており、2017年度に使用することによって、より一層の研究の進展が見込まれる。
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