研究課題/領域番号 |
16K05895
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田嶋 智之 岡山大学, 環境生命科学研究科, 講師 (90467275)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | カーボンナノチューブ / ヒドロキシアパタイト / 擬似体液 / 交互浸漬法 / ナノクリスタル / ナノハイブリッド / デンドリマー |
研究実績の概要 |
Apatite coating on dendrimer-modified buckypaper and the formation of nanoapatite on MWCNTs 骨の構成物質であるヒドロキシアパタイト (HAp) は生体適合性を有し、人工骨、デンタルインプラント、細胞培養シートなど、生体材料開発 (再生医療) の観点から注目を集めている。ヒドロキシアパタイトのナノクリスタルは、マイクロクリスタルに比べ、骨芽細胞の癒着とタンパク質の吸着が増加することが知られており、骨や歯根は、コラーゲンのファイバー状の網目構造にナノクリスタルが結合している。こうした観点から、HApとファイバー状材料とのハイブリッドの形成は、バイオミネラリゼーションを模倣した材料として注目を集めている。そこで、本研究では、1,10-ビス(デシロキシ)デカンをコアに有するデンドリマーをカーボンナノチューブに物理修飾したBuckypaperを作製し、その後、HApとの複合化を行った。 Buckypaper/HAp複合材料の作製は 複合材料の作製は、0.2 M塩化カルシウム水溶液と0.12 Mリン酸水素ナトリウム水溶液を用い、交互浸漬法により行ったところ、Buckypaper/HAp複合材料を得ることに成功した。複合体の構造決定は、SEM, TEM観察、XRD、EDX分析により行った。さらに、擬似体液中に浸漬し、HApの結晶化を行ったところ、CNT の表面にHApが鱗状に結晶成長している様子がTEMの観察により確認された。CNT の表面をデンドリマーが高密度に修飾しており、 デンドリマーのカルボ キシラー キシラート部位にカルシウムイオンが配位し、 そのカルシウムイオンを中心にHApが結晶成長していると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の成果により、申請時の目標の①太い単層カーボンナノチューブを分散させる技術の確立 および ②無機材料との複合化技術の確立 の2点を達成した。 太いカーボンナノチューブの表面を傷つけることなく、デンドリマーの物理修飾を行った。デンドリマーは表面官能基密度が高く他材料との親和性を自由に制御できるため,他材料を容易に担持することが可能で、無機材料と親和性の低いカーボンナノチューブに対し、温和、かつ簡単なプロセスで無機材料との複合化に成功した。この手法は、カーボンナノチューブシートについても有効な手法であることを明らかとした。従来より、カーボンナノチューブのシート状材料は、その応用が期待されていたが、他の材料との親和性が低いため、化学修飾してカーボンナノチューブを傷つけることなく、他材料と複合化させる技術は極めて少なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
デンドリマーを「分子のり」としたカーボンナノチューブと無機材料との複合化技術を活かし、SWCNT/無機半導体材料ハイブリッドの機能を検討する。現在、無機半導体性結晶の面選択的な複合化とその光触媒活性の相関について、研究を進めている。このSWCNT/無機ハイブリッドについて、可視光を用いた水の分解反応をガスクロで定量し、可視光照射下での水素や酸素発生量の量子収率やSTHを求める。ハイブリッドの構造と機能との相関について、材料の設計へとフィードバックすることで、新たな機能性材料設計へと役立てる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年7月に投稿した論文のオープンアクセス等にかかる費用として使用することを計画していたが、アクセプトまで予想外の日数を要し、年度またぎのアクセプトとなったため、平成29年度内での執行ができなくなった。該当額については、年度またぎでアクセプトされたため、論文投稿料として使用する予定でいる。
|
備考 |
上記HPにて研究成果を公表している。
|