研究実績の概要 |
有機半導体を用いるデバイスは分子配列の差異により電荷移動度特性が大きく変化することから、いかに電荷移動に有利な分子配列を材料に付与できるかが鍵である。本研究では、光で分子配列配向を制御可能な有機半導体材料の探索を進めており、昨年度、オリゴチオフェン誘導体をネマチック液晶に少量を混合し、レーザー光を照射するだけで、化合物の光配向性を簡便な方法で検出できることを見出した。本年度は太陽電池用有機半導体として実績のある2,5-di-(2-ethylhexyl)-3,6-bis-(5''-n-hexyl-[2,2',5',2'']terthiophen-5-yl)-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione (SMDPPEH)および2,5-dioctyl-3,6-bis-(5''-n-hexyl-[2,2',5',2'']terthiophen-5-yl)-pyrrolo-[3,4-c]pyrrole-1,4-dione (SMDPPO) を用いて、液晶中における光配向特性について検討した。SMDPPEH を各種濃度で含むサンプルにレーザー光を照射したところ、ある一定以上の光強度でゆらぎを伴った干渉縞が観測され、SMDPPEH が光配向性を示すことが明らかとなった。また、SMDPPEH の濃度が0.05 mol%のときは干渉縞数は1 であったが、0.1 mol%および0.075 mol%の場合は6 となり、SMDPPEH の濃度が増大すると配向変化を大きく誘起できることが明らかとなった。これは色素濃度が高くなるにつれて、励起される色素が増加し、配向変化を誘起するトルクが増大するためと考察した。さらに、レーザー光の入射角度が20°から30°のとき、いずれの濃度においても最大となり、照射方向を変えることによって配向変化が大きく誘起できることが明確になった。
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