研究実績の概要 |
有機半導体を用いるデバイスは分子配列を揃えることにより電荷移動度特性が大きく向上することから、配向制御に関する研究が盛んである。われわれは有機半導体がエネルギー的に安定な配置をとりうる結晶構造では高性能化できない材料系に対しても、光配向によって高性能化可能な分子集合体の創製を目的として、光配向性の有機半導体材料の探索を進めている。これまでに、オリゴチオフェン誘導体に加えて、有機半導体であるジケトピロロピロール誘導2,5-di-(2-ethylhexyl)-3,6-bis-(5''-n-hexyl-[2,2',5',2'']terthiophen-5-yl)-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione (SMDPPEH)がネマチック液晶中において、レーザー光で配向応答性を示すことを明確にしている。今年度は、有機半導体として実績のあるペリレン誘導体について検討を行ったところ、N,N'-bis(2,5-di-tert-butylphenyl)-3,4,9,10-perylenedicarboxyimide(DtBPhPI)を各種濃度で含む液晶サンプルにおいて、レーザー光照射により、ある一定の光強度以上でゆらぎを伴った干渉縞が観測された。また、プローブ光を用いて、配向特性について詳細に調べたところ、プローブ光がポンプ光と平行方向になる時に干渉縞が出現し、垂直方向になるときに消失することが明らかとなった。光照射によって誘起される液晶の配向方向は、照射偏波面と平行方向であることが示唆された。それゆえ、DtBPhPIはこれまでの光配向性色素と同様な配向様式で光により配向可能なことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、従来の有機半導体から光配向性を示す分子骨格を見つけることが重要課題であり、いくつかの有機色素について光配向性を評価・検討し、液晶分散系において光配向性を示す有機半導体をいくつか見出すことに成功している。今年度は、有機半導体として実績のあるペリレン系有機半導体に着目して、光配向性について検討した。液晶と相溶性の低いN,N'-dipentyl-3,4,9,10-perylenedicarboximide (DnBPI)においては光配向性については検討できなかったが、非平面構造をもつ有するN,N'-bis(2,5-di-tert-butylphenyl)-3,4,9,10-perylenedicarboxyimide (DtBPhPI)は、液晶との相溶性が高いため液晶中に分散でき、光によって液晶の配向変化を誘起可能なことが明らかとなった。従来のオリゴチオフェン系よりも長波長光源による光配向が可能なことから、省エネルギーかつ、化合物へのダメージの軽減化にも寄与できる材料系として意義ある結果であることが示唆される。
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