有機薄膜太陽電池(OPV)の動作原理は、①光吸収による励起子生成、②ドナー(D)/アクセプター(A)界面での励起子の解離、電荷生成、③電極への電荷輸送、に大別できる。②の高効率化に関して重要な役割を担うD/Aの混合・界面状態は、薄膜作製プロセスで大きく変化する。上記より、OPV薄膜のD/A混合・界面状態を判断する簡便な方法が望まれており、本研究では、D/A界面で形成されるCharge Transfer(CT)からのELスペクトル(CT EL)解析法を提案した。 2016年度は様々なバルクヘテロ接合型(BHJ) OPVのEL測定を行ったところ、AFM像では相違が見られない2種類のBHJ膜において、一方の膜からはCT EL、もう一方の膜からはCT ELとアクセプター(PCBM)からのELが同時に観測された。これによりAFM等では観測できないBHJ相分離構造(D/A混合状態)をEL発光により観測することができた。 2017年度では、Dとして共役高分子PTB7とAとしてアルキル鎖長の異なるペリレン誘導体(PTCDI-Cn)の積層OPVを作製し、そのOPV特性とCT発光のアルキル鎖長依存性を調査した。アルキル鎖長(D/A間隔)によりCT ELのピークが変化し、CT EL解析によりD/A界面状態の観察に成功した。OPV特性としては、アルキル鎖が長いと短絡電流は低下、開放電圧は向上し、アルキル鎖がD/A間のスペーサーとして機能することを実証した。 最終年度は、まとめとして、前年度に得られたPTB7/PTCDI-Cn積層OPVの成果に関する論文執筆・投稿を行い、Organic Electronics誌に掲載された。また上記論文内容の学会発表を行った。さらに継続実験として、末端に極性基を有するPTCDI誘導体を用いて、同様の研究を行いD/A界面における分子配向や双極子の影響を調査した。
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