研究実績の概要 |
本研究は、高移動度かつ安定に両極性挙動を示す有機半導体材料の開発と、それを用いて高性能なデバイスや新奇なデバイスを作製することを目的として行われたものである。本年度は、新規開発したペリレノチオフェンジイミド(PTI)および昨年度報告したペリレノジチオフェンジイミド(PDTI)を基盤として、両極性有機半導体材料を開発し、報告を行った。 前年度、高移動度有機n型トランジスタ材料として報告したリレンジイミド二量体(dNTI, 電子移動度: 1.5 cm2/Vs, Org. Electron., 2018, 62, 548-553)の分子デザインを参考に、PTI二量体(dPTI)を合成した。dPTIはdNTIと比較して高いHOMOレベルを持ち、dPTIを用いたトランジスタは大気安定にp型・n型両極性を示した(J. Mater. Chem. C, 2019, 8, 2267-2275)。また、PDTIを用いた高分子有機半導体材料(PPDTI-DP)は初年度に報告した高分子半導体材料PNDTI-DPと比較して両極性有機トランジスタ材料として“適したHOMO/LUMOレベル”を有し、同材料を用いた有機トランジスタは、よりバランスの取れたp型・n型両極性を示した。PPDTI-BTを用いた単一材料での相補型インバータデバイスは大気下で安定に動作し、良好な特性(GAIN: ~170, Vdd =40 V, W/L = 1500/40)を示した。加えて、PTIおよびPDTIを用いて近赤外光吸収材料を開発した。それらPTIおよびPDTI誘導体は近赤外光を吸収する有機薄膜太陽電池の活性材料として応用可能であった(光電変換効率:~6%)。
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