研究課題/領域番号 |
16K05902
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
片岡 祥 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50435765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 層状ペロブスカイト / カゴ状シルセスキオキサン / 有機ケイ素 / 細孔 |
研究実績の概要 |
有機ケイ素であるカゴ状シルセスキオキサン(POSS)を層間材料に持つ層状ペロブスカイトは、ナノ細孔を持つ。本年度は、層状ペロブスカイトの機能強化や新機能の発現を目指して、ナノ細孔の細孔容積を自在に制御する技術を開発した。ペロブスカイト層には塩化銅を用い、層間材料にはアミノプロピル基を端末に持つPOSSを用いることで、POSSの強固なカゴ状骨格からナノ細孔が作りだされる。それに対して、POSSによる層間距離である1.7nmを維持したまま、POSSの一部を有機アミンとの交換を試みた。原料である塩化銅とPOSSに加えて、エチルアミンを小さなアミンとして添加した場合、層間距離を維持した状態で、POSSの最大20%をエチルアミンと交換することができ、結果的に細孔容積は最大40%まで増大した。またエチルアミンの交換量に比例して、細孔容積が増大することが分かった。ただし、20%以上のエチルアミンを交換すると、エチルアミンによる層間距離(1.06nm)を持つ層状ペロブスカイトが作製され、これらはナノ細孔は持たない。一方、フェネチルアミンを大きなアミンとして添加した場合、層間距離を維持した状態で、POSSの最大17%をフェネチルアミンと交換することができ、細孔容積は40%まで減少した。同様にフェニルブチルアミンに対しても同様の実験を行ったところ、細孔容積が減少することが分かった。さらに、層間材料に部分的に有機アミンを持つ層状ペロブスカイトに対して、その機能を評価するため、磁気特性測定装置(MPMS)で評価した。その結果、20K以下で強磁性相互作用を持つことが確認され、層状ペロブスカイトとしての機能を維持していることが分かった。また、相転移温度や飽和磁化などは、POSS単独の材料とほぼ同じであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、層状ペロブスカイトの細孔を利用して機能強化を行うことを目的としており、その過程において、細孔容積を自在に制御する技術は非常に大きな成果であると考えている。引き続き、細孔制御を行いながら、層状ペロブスカイトの機能強化を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、層状ペロブスカイトの細孔を使って機能強化を行うことを目的としている。引き続き、細孔の拡大と目的物質を充填することによる機能強化を図る。そのような機能強化のために様々な基材の上に層状ペロブスカイトを作製して、細孔制御、配向制御も併せて行いながら、全体として層状ペロブスカイトの機能強化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の予算使用状況としては、順調である。次年度使用額が一部発生したのは、所属機関の事情により、予定していた物品(50万円以下)を年度内に調達請求できなかったためである。これらの物品に関しては、平成30年度に直ぐに購入予定である。
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