本研究課題では、有機ケイ素化合物であるカゴ状シルセスキオキサン(POSS)を層間に持つ層状ペロブスカイトを作製し、機能開発を行ってきた。その層状ペロブスカイトは、層間にPOSSを持つことでナノ細孔を持ち、更にPOSSの一部を有機アミンに交換することで細孔を拡大することができることを昨年度までに明らかにした。本年度は、層状ペロブスカイトの機能性について評価した。まず、塩化銅とPOSSから成る層状ペロブスカイトの粉末サンプルを60MPaと圧力をかけてペレット状に成形したうえで、粉体抵抗測定システムを用いて導電性を測定した。その結果、層間材料がPOSS単独の場合や有機アミン単独の場合と比較して、POSSと有機アミンの両方が使われた場合、体積抵抗率が約100分の1以下になった。層状ペロブスカイトの導電性が高まったが、その測定値にばらつきが生じることが分かった。これは粒界の影響が示唆される。実際に、粉体サンプルに荷重をかけてペレット成形したが、電子顕微鏡観察によりペレット内の粒界が確認させた。粒界の影響を除くため、基板の上に層状ペロブスカイトをコーティングすることを検討した。層状ペロブスカイトの薄膜化については初年度に検討し、溶媒に溶かしてコーティングできても層状ペロブスカイト構造を持たないという結果であった。この点に関しては、構造を持たないことは変わらないが、層間材料のPOSSを部分的に有機アミンに交換した材料に関しては、層状構造を維持していることが分かった。つまり層間材料であるPOSSを部分的に有機アミンに交換することで、層状構造を形成しやすいことが示唆される。しかしながら、これまで得られた粉体サンプルと同程度の導電性を有しておらず、層状ペロブスカイトの薄膜化に関しては改良が必要であることが分かった。
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