分散重合は、モノマーは溶かし、生成するポリマーは溶かさない溶媒中で重合して、微粒子を得る重合法である。重合前には、均一であるが、ポリマーが生成すると析出してくる。このとき、ポリビニルピロリドン(PVP)のような分散安定剤が存在すると、ポリマーが粒子を形成する。重合の進行とともに生成するポリマーが新たに粒子を形成することなく、既に存在する粒子表面上に析出すれば、粒径の分布の狭い粒子が得られる。本研究では耐熱性、機械的強度が最も高い高分子の一つであるポリイミド粒子を分散重合で作製した。平成28-29年度にはポリイミドの中では柔軟な連結部を持つヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸ジエステルとオキシジアニリン(ODA)をエチレングリコール中で重縮合して、ポリイミド微粒子を合成した。モノマーの濃度やPVPの量を変えることで単分散性の高い、粒径の制御されたポリイミド粒子を作製することができた。また、重合系に少量の官能基のついた第一級アミンを添加することによって長鎖アルキル基や水酸基を粒子表面に導入することに成功した。平成30年度はより剛直なピロメリット酸とODAよりなるポリイミド微粒子(PMDA-ODAPI)の作製を検討した。溶媒がエチレングリコールのみで重合すると粒子同士が凝集してしまった。そこで共溶媒としてポリイミドでも部分的に溶解するN-メチルピロリジノンを用いて100-160℃で分散重合したところ、安定に分散した粒子を得ることに成功した。粒子の形状は重合温度で大きく異なった。130-160℃では扇形の粒子が得られた。一方、100-120℃では平板状の粒子が得られた。また、100-120℃でも撹拌をしないで重合すると球状をした粒子が得られる。このように分子鎖が剛直なPMDA-ODAPIは重合条件によって粒子の形状を制御できることが明らかになった。
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