研究課題/領域番号 |
16K05905
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佃 諭志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00451633)
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研究分担者 |
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
杉本 雅樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学研究部門, 上席研究員(定常) (90354943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高分子ナノワイヤー / イオンビーム / 金属ナノ粒子 / ハイブリッドナノ材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、単一粒子の飛跡に沿って高分子ナノワイヤーを形成する手法「単一粒子ナノ加工法」を基盤とし、高分子ナノワイヤーに金属ナノ粒子を融合し、触媒特性などの高分子で発現が困難な機能付与や、高分子と金属ナノ粒子の特性を組み合わせた複合機能性材料創成を目的としている。初年度においては、刺激感応性ゲルナノワイヤーに金ナノ粒子をハイブリッド化する手法、及び高温耐熱性のポリカルボシラン(PCS)ナノワイヤーに触媒ナノ粒子をon-siteで合成する手法を確立している。平成29年度では、各種ハイブリッドナノワイヤーを用い、刺激応答性の光学特性と触媒特性の評価をそれぞれ行った。ポリビニルピロリドン(PVP)ナノワイヤーと金ナノ粒子のハイブリッドナノワイヤーは、金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因した可視光領域での吸収を示し、ワイヤー上の金ナノ粒子のサイズ、数密度の増加に従い長波長シフトした。また、大気中‐水中を交互で測定するサイクル測定では、ゲルナノワイヤーの膨潤‐収縮体積変化が起き、表面の金ナノ粒子の粒子間距離が変わることにより、LSPRに起因した吸収波長が可逆的にシフトすることを見出した。一方、PCSナノワイヤーにPdナノ粒子を担持したPCS-Pdナノワイヤーを用い、COの酸化触媒特性を評価したところ、低温においてもCO2への高い転換効率を示すことを明らかとした。PCSナノワイヤー上でのOn-site還元によるPdナノ粒子の直接形成により高比表面積を有し、表面に活性面が露出した状態でPdナノ粒子を名のワイヤー上に担持させている構造が触媒特性の高効率化を示した要因であると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、初年度に合成法を確立した刺激感応性ゲルと金ナノ粒子、及び耐熱性ナノワイヤーと触媒ナノ粒子の融合化の2種の材料の機能評価を当初予定通り行うことができ研究の進捗状況は良好である。刺激感応性センサー材料では、PVPナノワイヤー上に非管理還元法を利用して金ナノ粒子を作成したハイブリッドワイヤーの紫外可視吸収スペクトルを測定した。水を内部に含み膨潤するゲルの特性で金ナノ粒子の粒子間距離を制御し、LSPRに起因した吸収波長を可逆的に制御することが当初目的に組み込まれており、大気中と水中での光学吸収スペクトル測定を行いゲルの膨潤‐収縮挙動に対応し、可逆的に吸収スペクトル波長をシフトさせることに成功している。また、高温耐熱性触媒繊維材料では、昇華性のパラジウムアセチルアセトナトを前駆体とし、PCSナノワイヤー上で直接還元させ、粒子を析出させる乾式法で作成したPd-PCSナノワイヤーの触媒特性をCOの酸化反応で評価し、低温においても高効率にCOからCO2に転換することを明らかとした。PCSナノワイヤー自身を還元剤とし、ワイヤー表面に直接ナノ粒子を析出させる乾式法により、表面修飾や保護剤を利用せずとも分散状態で、高比表面積のナノワイヤー上に触媒粒子を担持できる本手法の有効性が十分に示されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究経過において、水溶液中での紫外線還元法による金ナノ粒子とゲルのハイブリッド化とPCSナノワイヤー上でのon-site還元によるPdナノ粒子とのハイブリッド化の手法の確立とハイブリッド化による複合機能化を達成している。しかしながら、実証しているのはそれぞれPVP-Au, PCS-Pdの組み合わせだけであり、この他にも機能複合化可能な材料系が存在するはずである。今後は、①触媒繊維材料の探索として高温耐熱性のPCSナノワイヤーへのPt, Rh及びその合金のハイブリッド化、②刺激応答性センサー材料の探索として温度応答性ゲル(PNIPAMなど)、pH応答性ゲル(ポリアクリル酸(PA)など)、分解型ハイドロゲル(タンパク質、分解型架橋剤など)との組み合わせを検討し、多くのニーズに対応した機能性ナノ複合材料の創成を行う。また機能向上の施策として、金属ナノ粒子の均質性や粒径制御、ワイヤー上での数密度制御などの精度を向上させる合成手法の改良を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度は、刺激応答性センサー材料評価を大気中と水中での光学吸収スペクトル測定から行い良好な結果を得ている。外部刺激に応答した光学吸収特性の変化を測定するため、当初予定より測定雰囲気(温度、湿度、pH)の精密な制御が必要となり、そのため測定ユニットの製作を平成30年度に行うため研究費の一部を次年度に使用することとした。 (使用計画)平成29年度からの繰越金については、外部刺激に応答したゲルの体積変化に対応した光学吸収スペクトル測定を行うため、分光光度計の環境制御型ホルダーの製作費として支出する。
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