研究課題/領域番号 |
16K05909
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
服部 義之 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (20456495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 活性炭素繊維 / フッ素化学 / 光触媒 / 二酸化炭素変換 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本研究では、サブナノからサブミクロン孔径を階層的に持つ活性炭素繊維(ACF)に二酸化炭素と水素を濃縮し、ACFの細孔中に担持した光触媒によりメタンへと変換、さらに水の共存下においてハイドレート化貯蔵する3つの機能を集積化したACFの創製を目的としている。具体的には、以下の項目に関して研究を行った。 ①ACF細孔中での光触媒反応を実現するため、ACFをフッ素化し茶色および白色のフッ素化ACFを作製した。②フッ素化ACFのRaman分光による構造解析を行った。③炭素ナノ細孔空間の有する自発的圧縮作用により、二酸化炭素の高密度貯蔵を検討した。④特異なガス吸着能を有するナノカーボン材料の創製を行った。 本年度の主な実績は以下のとおりである。 ①ACFを473 Kまでの反応温度でフッ素化し、その細孔構造と気体吸着特性を評価した。②表面増強Raman散乱法を用いることにより、フッ素化ACFと同様な構造を有するフッ化黒鉛の構造解析をRaman分光法で解析することに成功した。その成果を学会で発表した。③フッ素化チューブ状ナノ空間の自発的圧縮作用を調査する一環として、フッ素化カーボンナノチューブの二酸化炭素吸着特性に関して特異的な吸着特性を見出し、学会発表を行った。④厚さ約30-80 nmのシート状構造かつ多孔性を有するカーボン材料である細孔性カーボンナノシートの作製に成功した。また気体吸着測定に加え、イオンをプローブとする電気化学的手法を用いて細孔構造を詳細に解析した。得られた成果を国際会議および論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面増強Raman散乱法を用いることにより、フッ素化ACFと同様な構造を有するフッ化黒鉛の構造解析をRaman分光法で解析することに成功した。フッ化黒鉛のRamanスペクトルはこれまで報告されたことが無く、吸着特性に大きな影響を与えるC-F結合に関する詳細な解析が可能となることから有意義な成果といえる。フッ素化単層カーボンナノチューブの二酸化炭素吸着特性においては、吸着された二酸化炭素分子が低圧力まで減圧しなければ脱着しない特異な吸着現象を見出した。二酸化炭素を効果的にナノ空間に固定できる非常に有効な吸着特性を見出したと言える。メタン等の吸着材として可能性がある細孔性カーボンナノシートの開発に成功した。この細孔性カーボンナノシートは、分子を効果的に吸着可能な階層化細孔構造を有することが特徴である。その成果に関しては、国際誌において論文発表を行った。以上に示したとおり、予定していた研究課題について検討し、学会発表と論文発表通じて公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、二酸化炭素の化学変換場であるフッ素化ナノ空間をACFおよび単層カーボンナノチューブにおいて実現することができた。今後は、このフッ素化ナノ空間に光触媒能を有するナノニッケルおよび酸化ニッケルを高分散し、二酸化炭素の光変換反応を検証する。また、平成28年度に準備が完了した二酸化炭素光変換・分析セルを用いて、フッ素化ナノ空間中に高分散したナノ粒子の光触媒能を評価する。ナノ粒子の担持量、ナノ粒子の粒子径、およびフッ素濃度を、X線光電子分光法、透過型電子顕微鏡、Raman分光法などの解析により明らかにする。これらの解析により、ナノ粒子の構造およびACFのフッ素化度と、二酸化炭素の光変換能の相関を探索する。また、フッ素化カーボンナノチューブにおけるナノ空間への二酸化炭素の特異吸着能を利用し、高効率な光変換を検討する。さらに、開発に成功した細孔性カーボンナノシートを用い、メタンなどの分子吸着特性を評価し、高密度分子貯蔵材料の開発を目指す。
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