研究課題/領域番号 |
16K05911
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
土田 亮 岐阜大学, 工学部, 教授 (60183076)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コロイド微粒子混合系 / 偏析 / 超規則構造 / 光エネルギー移動 / 乾燥散逸構造 / 自己組織化 / コロイド結晶 / 合金結晶 |
研究実績の概要 |
コロイド混合微粒子水分散液における合金結晶形成と偏析現象を用いて、自己組織的に超規則構造を発現させ、方向性の有る光エネルギー移動を実現する目的のため、平成29年度においても、シリカ、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルの3種類の単分散コロイド粒子について、1)滴下する液量、2)分散液の濃度、3)乾燥温度、4)コロイド粒子の種類、5)分散媒の種類、のパラメータを変化させながら、自己組織化による散逸構造発現を実施した。 平成29年度に於いては、1.微粒子混合系における乾燥散逸構造の発現時に、偏析に関わる2種類の微粒子の片方を水溶性色素で着色し、偏析効果が目視でも明らかになるようにする、2.大面積の乾燥散逸構造を発現させ、これまでのカバーガラス上での結果と比較することでその形成メカニズムを明らかにすると共に、実用目的も視野に入れた研究を行う、ことを重点的に実施した。 1.どちらの微粒子をメチルバイオレット等の色素で着色するかは、微粒子に対する色素の吸着量を定量的に調べ、一番吸着量が多い組み合わせを選んだ。片方の微粒子を着色後、2種類の微粒子を混合した分散液から乾燥散逸構造を発現させた結果、目視でも明らかに分かる偏析が見られた。結果を定量化するため、標準カラー版でCCD顕微鏡の色補正を行い、画像処理ソフトで色素濃度を検定した。 2.カバーガラス上だけでなくフラットシャーレ、時計皿を用いて乾燥散逸構造を発現させた。時計皿ではカバーガラスと同様、周囲から中央へと乾燥が進んだが、フラットシャーレでは中央から外周へと乾燥が進んだ。いずれの系でもその大面積に関わらず、顕著な偏析効果の発現が見られた。フラットシャーレにおいては乾燥条件により二重の偏析も発現し、液蒸発に伴う液対流が中央部と外周部で発生したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては、微粒子最密充填結晶構造の直接観察として3種のコロイド微粒子それぞれについて、十分な脱塩によりコロイド結晶を発現させた。コロイド微粒子は、それぞれ密度、屈折率、表面特性が異なるものが選ばれており、大きな偏析効果や色素吸着効果が得られる。ガラス基板上にコロイド分散液を滴下し、これの自然乾燥による散逸構造の発現を様々な条件下で直接観察した。この間、CCD顕微鏡による乾燥パターン変化のビデオ録画、時間分割反射スペクトル測定によるブラッグピーク波長の変化測定を同時に実施した。コロイド結晶を発現したPMMA微粒子水分散液液滴の、乾燥に伴うブラッグ反射ピークの変化を見ると、最初600 nm領域にあった反射ピークが、連続的に短波長シフトした。これはすなわち、分散液が結晶を発現したまま乾燥して、最密充填構造を発現している事を示す。次年度においては、微粒子混合系が発現する乾燥散逸構造における偏析効果を重点的に調査し、色素により着色を用いることで偏析効果を簡便に明白に示すことに成功した。また、構造形成の実用化を視野に入れ、発現構造の大面積化に取り組み、直径約7センチの大きさでも偏析が顕著に起こることを見出した。これら、本研究課題申請時に初年度の目標としたものが、全て実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は当初計画どおり、これまで明らかとしたコロイド結晶発現による規則構造形成、そして偏析効果による2次構造発現を用い、光エネルギー移動の効率化、方向性を試みる。平成29年度に用いたコロイド微粒子の色素吸着を応用し、複数の蛍光性の色素をコロイド微粒子に吸着させる。そして、これらの間での光エネルギー移動の状況をマルチチャンネル分光測光装置により測定し、それを定量化する予定である。
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