研究実績の概要 |
KRAS遺伝子exson2, codon12に高頻度で現れる1塩基変異を標的として,細胞膜透過ペプチド(R9)を導入したinchworm型ペプチド核酸(PNA)-ポリエチレングリコール(PEG) conjugate (i-PPC(R9))を合成し,ヒト膵臓腺癌由来がん細胞BxPC-3細胞(KRAS遺伝子野生型)とPANC-1細胞(KRAS遺伝子変異型)への細胞死誘導効果について評価した結果,BxPC-3細胞に対しては遺伝子配列特異的に細胞死を誘導していることが示されたものの,PANC-1細胞に対しては細胞死を誘導しないことが示された。この原因はR9導入によるi-PPCの1塩基認識能の低下と推察し,細胞内輸送後にi-PPCとR9の間にシステインプロテアーゼ(Cathepsin B)により切断されるペプチド(GFLG) を導入したR9-GFLG-i-PPCによるBxPC-3細胞の細胞死誘導について,非切断型i-PPC(R9) と比較した。i-PPC添加4日目における細胞死効率を測定した結果,R9-GFLG-i-PPCではフルマッチ型(FM)で42.6% (ミスマッチ型(MM): 13.2%, 比較対象配列型(AT): 20.1%),i-PPC(R9)のFMでは44.7% (MM: 6.3%, AT: 12.3%) となり,GFLG配列を導入しても細胞死の誘導効率を向上させるには至らなかった。これは,切断後のi-PPCがエンドソームあるいはリソソームからリリースされにくいことが当研究グループの先行研究から示唆されており,R9のサイトゾルへのリリース効率の向上が今後の課題として提示された。一方で,i-PPCはスフェロイド化BxPC-3,PANC-1細胞に対しても遺伝子配列特異的に細胞死を誘導することが示された。
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