ポリ〔オリゴ(エチレングリコール)モノアルキルメタクリート〕(POEGMA)あるいは同アクリラート(POEGA)ゲルは生体適合性が高く、高塩水中でも感温性を示す等優れた特性を持っている。この特性を生かした温度アクチュエータを作成することが本研究の目的である。H28年度はOEGMAとHEMA共重合体の円柱状ゲル(OEGMA-HEMA)を外側からカルボン酸無水物とピリジンで選択的にアシル化すると完全にアシル化したシェル層と未反応のコア部分に分かれる未反応核モデル類似の機構で進行する。このゲルを2等分に切断した半円筒形のゲルはこのコア部分とシェル部分の感温性の違いにより、水中で温度変化により大きく屈曲・伸長することを見出した。しかしながら、mmオーダーのゲルでは平衡に達するのに半日以上かかり遅すぎて実用的でないとことが判明した。H29年度より、急遽この問題を解決するため、高速で膨潤―収縮可能な多孔性ゲルを用いることを検討した。多孔性ゲルを合成できるオリゴ(エチレングリコール)モノアルキルアクリクリート(OEGA)と2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の共重合ゲル(OEGA-HEA)を合成した。しかし、多孔性ゲルを用いる場合、反応がゲル内全て均一で進みコアーシェル構造が生成しない。この問題を解決するため、アシル化剤の拡散を抑制するエタノール等のアルコールで膨潤させた多孔性OEGA-HEAゲルを用いると、アシル化が不均一に進行し、目的の高速屈曲性の半円筒形ゲルの作成に成功した。 H30年度は、無水酢酸に代えクロロ酢酸無水物を用い、生成したゲルのXRDによるゲル内部の塩素分布を測定するとともに得られた結果よりこの反応機構を確定した。さらに、長鎖のアルコールをアシル化剤の拡散抑制剤に用いることにより、高速かつ高屈曲性の半円筒形ゲルが得られることを明らかにした。
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