研究実績の概要 |
本研究では、ゴム製品中のカーボンブラック(CB)の果たしている役割を、テラヘルツ分光を用いてマクロ的な視野で詳細に評価し、製品に配合する際のCBに対する諸条件を明らかにし、最終的な製品向上に結びつけることを目的としている。 最終年度の平成30年度には、異なる種類のCBを配合した試料を用意し、引張試験とテラヘルツ分光による評価を行った。昨年度までは、標準的に利用されているSEAST3と呼ばれるCBを用いて評価を行ったが、今年度は、CBのが微粒子粒径がほぼ同じでストラクチャーの異なるSEAST3H, SEAST300、そしてストラクチャーがほぼ同一であるが粒径の異なるSEAST9, SEASTSOを用いて、昨年度と同様の評価を行った。CB配合量はすべて5 phrで統一した。 まず、CBのストラクチャーとテラヘルツ吸光度の間には相関があることを再確認した。すなわち、ストラクチャーの大きなCBほどテラヘルツ吸光度が大きく評価されることが明らかとなった。引張試験では、ローストラクチャーの場合に強度が低下することも確認された。一方、ストラクチャーが同程度で粒子径が異なる場合には、テラヘルツ吸光度はあまり変化せず、引張試験でも、ストラクチャーが異なる場合ほどの差異は見られなかった。また、粒径の大きなSEASTSOの場合には、延伸状態に関わらずテラヘルツ吸光度のバラツキが変わらないという特異性が見られた。 十分な数の試料を評価できなかったため、現時点では確定的なことを言えないが、経験則として言われているハイストラクチャーのCBが好ましいということは、引張試験でもテラヘルツ吸光度のバラツキによっても確認することができた。一方、粒子径については、特に大きな場合は引張伸びの点に問題があるが、テラヘルツ吸光度のバラツキの点では好ましい結果になることが分かった。CB配合量の影響は今後の課題である。
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