研究実績の概要 |
多糖類誘導体の水溶液やナノファイバー分散水溶液の試料濃度、金属塩の種類・添加濃度や照射温度などの調製条件を変化させ、高分子鎖の水和状態を制御した放射線誘起反応による高分子ゲル化挙動についてゲル分率や膨潤性などの物性により評価する。また、水和状態を把握できた試料中でのOHラジカルとの反応で誘起された高分子ラジカルの同定、減衰挙動を確認するとともに、得られたゲルの水和状態を熱分析や分光法等で評価し、ゲル材料の水和状態、構造と物性の関係を明らかにする。 ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの多糖類誘導体やブタ由来・魚由来のゼラチンを原料としてプロトンビームライティング(PBW)加工法を用いて、エネルギー、照射量、試料濃度を変化させることにより、マイクロメートルサイズのヒドロゲル微小構造体を作製することができた。 また、吸着水(保持水分量)が多糖類よりも少ない植物由来のポリアミド11とポリ乳酸ブレンド体の放射線架橋する技術を開発した。線量、雰囲気などの照射条件と架橋効率の関係及び熱的・機械的特性向上について、ゲル分率測定、熱機械分析や衝撃試験等にて評価した結果、架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートを3 重量%添加したポリ乳酸/ポリアミド11(重量比50/50) ブレンド体に電子線を100 kGy 照射すると、ゲル分率が約83%まで向上した。この得られた架橋ブレンド体がポリ乳酸及びポリアミド11 の融点(それぞれ約175, 185℃) 以上でも熱変形をほとんど起こさず、その衝撃値が約5 kJ/m2 とポリ乳酸単体の2.5 倍まで向上することを見いだした。
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