研究実績の概要 |
平成30年度は研究実施計画で示した実施項目(v)界面反応機構解明, (vi)デバイス形態の模索に主に取り組み,以下の成果を得た.1)LixTiO2エピタキシャル膜/Li3PO4固体電解質膜/Li金属膜からなる薄膜モデル電池をパルスレーザー堆積法およびスパッタリング法で構築し,紫外光照射時のリチウム脱離現象を詳細に解析した.紫外光による温度上昇が無視できること,照射後に非照射でLi挿入反応させると挿入量が増大すること,光照射脱離と非照射脱離をサイクルごとに実施すると照射時のみ容量が増大することから,光励起キャリアでLi脱離反応が促進されることを示した.モット・ショットキー解析からLixTiO2はLi3PO4との界面でn型空乏層を形成しており,光励起で生じた正孔により電極内のTiが3価から4価に酸化されることで,Li脱離時の電荷補償がなされていることを明らかにした.2)光Li挿入現象については,n型α-MoO3エピタキシャル膜/Li2SO4水溶液界面で調べた.開回路状態で紫外光を照射すると,光起電力によりでMoO3の電極電位が低下し,Li挿入反応電位に到達した.X線回折測定から水和したLiイオンが構造内に挿入されていることを確認した.界面付近のエネルギー準位の解析から,Li挿入(還元)の対となる酸化反応が水の分解による酸素発生である可能性を明らかにした.界面での結晶構造,電子構造解析から,Li挿入のいずれもLi脱挿入反応電位,フラットバンド電位,バンドギャップのエネルギー関係で説明できることがわかり,光エネルギーを利用したイオニクス現象開拓の基礎となると考える.さらに,3)界面制御手法として,酸化物表面修飾でLi脱挿入時の界面構造が変化し,Li脱挿入量や反応の可逆性に強く影響することを明らかにした.
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