| 研究課題/領域番号 |
16K05934
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
上田 純平 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (90633181)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 熱イオン化 / 熱クロスオーバー / 熱消光 / 蛍光体 / 白色LED |
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| 研究実績の概要 |
近年、白色LEDの高出力化に伴う発熱により、白色LEDに封止されている蛍光体の熱特性の向上、また、その熱消光の原因の解明が急務とされている。
本研究は、白色LED用蛍光体、特に5d-4f発光を有するランタニドイオンにおいて、どのようなメカニズムで温度消光しているかを明らかにすることを目的としている。
本年度は、主にCe3+添加ガーネット蛍光体における熱消光の原因の解明を明らかにした。Ce3+添加ガーネット蛍光体は、実用蛍光体に既に使用されている可視蛍光体であるが、消光原因については、未だに分かっていないことが多い。最も広く使用されているY3Al5O12:Ce3+ガーネット蛍光体のYサイトをLu、Gdに部分置換して、そのCe3+発光の消光プロセスをディレイ発光励起スペクトルと光音響スペクトルから考察した。既に我々は、Y3Al5O12:Ce3+については、Ce3+の電子が伝導帯に熱により移動する熱イオン化消光が生じることを明らかにしたが、Yサイトを別のランタニドイオンに置換しても、同様の熱イオン化消光が起きることが明らかになった。また、無輻射緩和プロセスは、直接観測することが難しいが、今回、光励起によって生成した熱を直接観測する光音響スペクトルを用いて、より深く無輻射緩和プロセスについて議論した。
また、5d-4f発光の消光には、熱イオン化の他に熱活性化クロスオーバーによる消光がある。我々は、Pr3+を添加したY3Al5-xGaxO12において、Ga濃度を変化させることにより、消光プロセスが熱活性化クロスオーバーから熱イオン化に変化する非常に特異な系を見つけ、消光に関する活性化エネルギーについても明らかにした。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究においては、実用白色LED用蛍光体、特に5d-4f発光を有するランタニドイオンにおいて、どのようなメカニズムで温度消光しているかを明らかにすることを目的としている。Ce3+添加Y3Al5O12ガーネット蛍光体は、最も広く使用されている実用蛍光体で、また、発光色の調整のために、ランタニドサイトをGdやLuで置換した蛍光体も開発されている。我々は、YサイトをGd,Luで部分置換したCe3+添加ガーネット蛍光体において、Ce3+の発光が熱イオン化によって、消光していることを明らかにしたころから、当初の目的は達していると言える。
また、温度消光において主な原因となる熱イオン化と熱活性化クロスオーバーの二つの消光パスが共存し、その度合いを変化させることができる蛍光体を発見し、その消光特性に関して詳細な調査を行った。一連の消光原因の実験により、熱イオン化消光・熱活性化クロスオーバー消光を支配する要因についても解明しつつあり、蛍光体の消光原因を調査するという当初の計画以上に、高効率蛍光体の開発を可能にする材料設計指針の構築の段階に進んでいる。以上より、当初の計画以上に進展していると言える。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでに、Ce3+単独添加ガーネット蛍光体において、深く研究してきた。今後は、同じく5d-4f発光を有し広く白色LED用蛍光体として用いられているEu2+蛍光体に焦点を当てて、消光原因の解明を行う。ランタニドイオンの基底準位と励起準位エネルギー準位、ホスト伝導帯と価電子帯の位置を表したDorenbosダイアグラムにおいて、Eu2+の5d準位は、Ce3+の5d準位よりも、より伝導帯近くに位置している。よって、Ce3+蛍光体よりもEu2＋蛍光体において、熱イオン化活性化エネルギーが低くなると予測できる。今後は、Eu2+蛍光体における消光原因の解明だけではなく、Ce3＋蛍光体との特性比較を行うことにより、消光原因における新たな知見を習得することを目的とする。
具体的には、Eu2+を添加した窒化物蛍光体の蛍光寿命＆発光強度の温度依存性、低温スペクトロスコピーからの配位座標モデルの構築、光伝導度測定・熱ルミネッセンス励起スペクトルからの熱イオン化消光の調査を行う予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より、スムースに試料作製ができ、かつ最初に合成した試料において、光学測定を行い十分な結果が得られたため、合成に係る研究費が当初より少なくなったため。
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| 次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、光学特性評価に関わる光学部品の購入に充てる。
これは、本研究を進める上で、光学系の修正が生じたためである。
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