Eu2+やCe3+イオン添加化合物は、白色LED用の蛍光体として広く利用されており、その消光プロセスを明らかにすることで高効率白色LEDの開発や新規光機能性材料への展開が期待されている。本年度は、Eu2+やCe3+イオンをはじめ、紫外励起緑色蛍光体として期待されているTb3+や赤色発光を示すCr3+の発光の温度依存性とその消光原因を明らかにした。さらには、その消光プロセスを利用し、長残光蛍光体や温度センサーへの展開も行った。 具体的には、Eu2+添加Ba[Mg2Al2N4]にいおて、熱イオン化消光を利用して、近赤外長残光蛍光体の開発に成功した。本蛍光体は、赤色光において励起可能で、かつ、熱イオン化消光の存在のために、励起電子が伝導帯へ移動しトラップに捕獲される。よって、赤色蓄光が可能な近赤外長残光蛍光体となり、励起・発光ともに生体の窓に位置しているため、バイオ蛍光プローブとして期待される。 Ce3+添加Sr2GdAlO5とSr3AlO4Fにおいて、消光プロセスが熱イオン化であることを明らかにし、フッ素置換することでバンドギャップを広げ、消光温度を向上させた。 Tb3+添加GdHOにおいて、水素アニオン配位により5d励起準位エネルギーが低下するため、Tb3+:5D4準位からの緑色発光は、5d準位を介して消光することを明らかにした。 Cr3+添加ZnGa2O4において、赤色発光を示す2E準位から熱クロスオーバープロセスにより、近赤外発光を示す4T2へエネルギーが移動することを利用し、二つの発光強度比の温度依存性から良い蛍光温度プローブになることを示した。 以上より、蛍光体の温度消光プロセスの解明とその消光原因を利用した新規光機能性材料への展開に成功した。
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