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2017 年度 実施状況報告書

トップダウン製法による薄片状Siナノ粒子の高容量リチウムイオン電池負極への展開

研究課題

研究課題/領域番号 16K05935
研究機関九州大学

研究代表者

長谷川 丈二  九州大学, 工学研究院, 助教 (60726412)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードシリコン / リチウムイオン二次電池 / 黒鉛 / 粒子形状 / サイクル特性
研究実績の概要

実用化を念頭に置いたシリコンナノ粒子/黒鉛複合電極の開発を目指し、様々な形状・サイズの黒鉛とシリコンナノ粒子の複合電極を作製し、黒鉛粒子の結晶性・形状・サイズなどが電極特性に与える影響について調べた。用いた黒鉛は、膨張化黒鉛(EC-1500・~10 micrometers)・球状黒鉛(SG-BH8・8 micrometers)・鱗片状黒鉛(Z-5F・~5 micrometers)の3種類の天然黒鉛と人造黒鉛(MAG・>10 micrometers)である。シリコンナノ粒子(平均結晶子径22 nm)にC/Si = 0.1の炭素被覆を施したものを、黒鉛/シリコンナノ粒子(85/15):カーボンブラック:アルギン酸ナトリウム = 80:5:15として合剤電極を作製し、15 wt%のFECを添加した1 M LiPF6/EC:DEC=1:1の電解液を用いて、ハーフセルにより評価を行った。
4種類の黒鉛の中で、膨張化黒鉛(EC1500)をシリコンナノ粒子と複合化させた電極では、50 mA/gにおける可逆容量および初回クーロン効率が最も低くなり、500 mAh/gの容量を維持できるサイクル数も最も少なかった。EC1500/シリコンナノ粒子電極の500 mAh/g到達時のセル電圧は、最も低い値で推移し、これが低いサイクル特性の要因の一つであると考えられる。その他の4種類の黒鉛を比較すると、最も平均粒径の大きい人造黒鉛(MAG)が、最も劣化速度が速いことが明らかとなった。一方、同程度の粒径で異なる形状を有する天然黒鉛である、SG-BH8とZ-5Fをシリコンナノ粒子と複合化した電極は、ほぼ同じサイクル特性を示した。このことから、黒鉛粒子の形状が電極のサイクル特性に与える影響は限定的であることが示唆された。また、これらの2種類の黒鉛/シリコンナノ粒子複合電極は、200回の充放電サイクル後においても、約440 mAh/gの放電容量を維持していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実用化の観点から、切粉由来シリコンナノ粒子と黒鉛の複合電極について、主に黒鉛のサイズ・形状がサイクル特性に与える影響について調べ、複合電極として最適な黒鉛材料を特定した。この実験には、電極の容量密度が1 Ah/cm2程度となるように設計した電極を用いており、実用的な負極材料の開発に向けた基礎的知見として重要なデータを得ることができたと考えられる。また、シリコンナノ粒子と鱗片状黒鉛の複合電極では、500 mAh/gの放電容量制限サイクルにおいて、150サイクル程度まで容量を維持することが可能であることも分かった。一方、シリコンナノ粒子の形状効果については、ナノメートルオーダーの粒子の形状制御が比較的困難であることが分かり、現在のところ作製上の問題からあまり有意義な結果を得られていない。しかし、産業廃棄物由来のシリコン材料の実用化という本研究の最終目標を鑑みると、概ね順調に研究が進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

H29年度で得られたシリコンナノ粒子/黒鉛複合電極に関する知見をもとに、高エネルギー密度電極の作製を試みる。シリコンナノ粒子/黒鉛複合電極の単位面積当たりの活物質量を増加させ、それらのサイクル特性について調査し、合剤電極の作製プロセスの最適化を行う。また、黒鉛よりも容量の大きいハードカーボンとの複合電極を作製し、その電極特性について調べる。現在のところ、バイオマス由来の炭素材料であるカーボンスフィアを検討している。産業廃棄物の再利用品であるシリコンナノ粒子とともにバイオマス由来のハードカーボンをリチウムイオン二次電池負極へと応用することで、資源の有効活用を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Nanostructured titanium phosphates prepared via hydrothermal reaction and their electrochemical Li- and Na-ion intercalation properties2017

    • 著者名/発表者名
      Yang Zhu, George Hasegawa, Kanamori Kazuyoshi, Tsutomu Kiyomura, Hiroki Kurata, Katsuro Hayashi, Kazuki Nakanishi
    • 雑誌名

      CrystEngComm

      巻: 19 ページ: 4551-4560

    • DOI

      10.1039/c7ce01123g

    • 査読あり
  • [学会発表] 水熱合成により作製したリン酸チタン化合物の電気化学的イオン吸蔵挙動2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川 丈二, 林 克郎, 朱 陽, 金森 主祥, 中西 和樹
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第30回秋季シンポジウム
  • [学会発表] Monolithic carbon electrodes with ordered mesopores for high-voltage aqueous supercapacitors2017

    • 著者名/発表者名
      George Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi, Katsuro Hayashi
    • 学会等名
      Carbon 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Highly flexible hybrid polymer monoliths comprising ordered mesoporous nanorod assemblies2017

    • 著者名/発表者名
      George Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi, Katsuro Hayashi
    • 学会等名
      The 19th International Sol-Gel Conference (Sol-Gel 2017)
    • 国際学会
  • [図書] ゾル-ゲルテクノロジーの最新動向 第36章 カーボン材料の設計と電気化学特性評価2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川 丈二
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      シーエムシー出版
  • [備考] 九州大学大学院工学研究院応用化学部門(機能)応用無機化学研究室ホームページ

    • URL

      http://www.cstf.kyushu-u.ac.jp/~hayashilab/

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公開日: 2018-12-17  

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