前年度において、様々な形状・サイズの黒鉛粉末とカーボン被覆シリコンナノ粒子の複合電極を作製・評価・比較した。本年度は、前年度の実験結果において最もよいサイクル特性を示した鱗状黒鉛(Z-5F)を用い、高エネルギー密度電極の実用可能性について調べた。Z-5F/シリコンナノ粒子複合電極(Z-5F:Si = 85:15)において、電極単位面積当たりの活物質量を増加させ、加えて充電容量を560 mAh/gに増加させてサイクル特性を評価した。電極活物質密度を3.4 mg/cm2まで増加させた場合において、200 mA/gで85サイクル目まで560 mAh/g (1.9 mAh/cm2)の可逆容量を維持できた。その後、サイクル数の増加と共に可逆容量は徐々に減少したが、200サイクル後においても約1.5 mAh/cm2の容量を維持していた。 電極の高容量化を目指すために、Siの混合比率を増加させて電極性能の評価を行ったが、Si比率を33%以上とした場合にはサイクル特性の著しい低下が見られた。そこで、黒鉛よりも充放電時の体積変化が小さいアモルファスカーボンとSiの複合電極の作製を検討した。水熱炭素化(HTC)反応を利用することにより、カーボン被覆していないシリコンナノ粒子を用いてHTC/シリコンナノ粒子複合体を作製した。Siの混合比率を40%、電極活物質密度を2.7 mg/cm2とした電極を作製し、250 mA/gで充電容量を750 mAh/gとした場合のサイクル特性を評価したところ、80サイクル目まで750 mAh/g (2.0 mAh/cm2)の可逆容量を維持できた。しかし、黒鉛との複合電極の場合とは異なり、その後容量は大きく減少し、170サイクル目で容量が1 mAh/cm2を下回った。
|