研究課題/領域番号 |
16K05940
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
衣本 太郎 大分大学, 工学部, 助教 (90464429)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 可逆燃料電池 / 水素生成反応 / 酸素還元反応 / 酸窒化チタン / 活性炭 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画にしたがい、活性炭への酸化チタン(TiO2)担持と熱窒化により①TiOxNy/ACの作製に取り組み、②その水素発生反応(HER)と酸素還元反応(ORR)触媒活性測定を行い、③両反応への触媒作用機序の解明に着手した。 ①では、“ヤシ殻粉末状活性炭(AC)”に、チタン源であるフッ化チタン酸アンモニウム水溶液とホウ酸水溶液を用いてTiO2粒子を担持させる方法について検討を行った。TiO2の担持状態を電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察した結果、活性炭をホウ酸水溶液に分散させた後にフッ化チタン酸アンモニウム水溶液を加える方法で、AC上でのTiO2の担持状態が最も良好と判断できかつ担持量が30wt%強と最も高くなることがわかった。次に、アンモニア気流中で加熱処理する熱窒化処理により、TiO2/ACを熱窒化させた。窒化が有意に進むと考えられる700℃以上の任意の温度で処理を行った後、X線回折法やX線光電子分光法などで窒素導入状態について調べた結果、800℃以上で明確にTiO2からTiOxNyへと組成が変化、すなわちAC上のTiO2の窒化が進むことが明らかとなった。計画書通り、窒素量を全自動元素分析装置で測定したが、有効な結果が得られなかったと判断されたため、以降はX線光電子分光法で推量することとした。 ②についても計画書通り、作製したTiOxNy/ACのHERとORRの触媒活性測定をデュアル電気化学アナライザーと回転電極装置を用いて行った。電解液として過塩素酸水溶液を用いて測定を行った結果、HERへもORRへも二元機能的に触媒活性を示すことを明らかにした。 ③についても計画書通り、両反応への触媒作用機序の解明を目指して、HERへのTafel解析ならびにORRへのKoutecky-Levich解析についても着手を開始し、相関についての検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに研究を計画スケジュールに沿って進めることができている。なお、当初計画ではTiO2の熱窒化処理後の窒素量について、全自動元素分析装置で行うこととしており、その装置を借用して実際に測定を行ったが、X線光電子分光法での測定も行って検討した結果、後者の結果からの推量の方がベターと考えられたため、現在その分析手法を用いて研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究については、活性炭を触媒の構成材料として用いている。活性炭には数多くの種類があるが、日本で最大の活性炭メーカーと共同研究関係が構築できたため、今後は同社から活性炭の提供を受けて、触媒作製ならびに評価を進めることができるようになったことが一点目として挙げられる。素性が明らかな活性炭を用いて研究を進めることで、より良い二元機能性を発現する触媒の作製が可能もしくは設計指針が得られることが期待できる。 二点目として、水素生成反応に対する触媒活性を評価するにあたって、Tafel解析を進める予定であったが、難しさが出てきている。そこで、まず実測可能な反応開始電位(過電圧)との関係性について調べることで対応したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書に記載の通り、本研究の実施に必要な物品としてデュアル電気化学アナライザーを購入した。その他物品を購入しなかった理由として、日本で最大の活性炭メーカーと契約を締結して、活性炭の提供を受けることができるようになったこともあり、活性炭粉末を購入する必要がなくなったことが挙げられる。旅費については学会発表分を見込んでいたが、結果として企業との共同発表となったため、旅費を本経費から支出する必要がなかったので執行していない。人件費、その他についても執行する必要が本年度はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
いずれの使用予定額についても、来年度以降、研究の実施と学会での成果発表や論文投稿などに必要な経費として適宜執行する予定である。
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