研究課題/領域番号 |
16K05941
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
松永 直樹 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40405543)
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研究分担者 |
酒井 剛 宮崎大学, 工学部, 教授 (40284567)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 燃料電池用電極触媒 / アルカリ形 / マンガン酸化物 |
研究実績の概要 |
本年度は、交付申請書に記載の「酸素還元活性における結晶相、ナノ構造および比表面積の影響解明」について、H28年度に得られた知見に基づきマンガン酸化物に着目して検討を行った。H28年度に金属塩の加水分解によってMn3O4, FeO(OH), Co(OH)2およびβ-Ni(OH)2の調製条件を確立し、これらの試料粉末のアルカリ水溶液での酸素還元活性をグラシーカーボン、白金板およびニッケル板上で評価したところ、Mn3O4を使用した場合に高い酸素還元活性が得られる傾向を見出した。そこで、Mn3O4調製の再現性を確認し、原料塩の変更や加水分解時に酸素を供給しながら結晶系の異なるマンガン酸化物の調製を試みた。その結果、塩化マンガンを用いた試料調製ではMn3O4相が得られるのに対して、酢酸マンガンや硝酸マンガンを用いた試料調製ではMn3O4相とMnO2相が混在しやすいことがわかった。また加水分解時に酸素を供給することで、MnO2相が得られやすくなることを見出した。調製した2種類のマンガン酸化物(MnO2, Mn3O4)は、同等の比表面積を有することがわかった。 次に、水素化ホウ素ナトリウムによる塩化白金酸の還元によってマンガン酸化物への白金担持を試みた。その結果、Mn3O4への白金担持は達成できたが、MnO2への白金担持は還元処理が強すぎたためか白金だけでなくMnO2もMn3O4に還元してしまうことがわかった。これら調製履歴の異なる2つの白金担持Mn3O4の酸素還元活性をアルカリ水溶液中で比較したところ、MnO2の還元とともに白金の析出担持した試料の触媒活性はMn3O4上に白金の析出担持した試料の触媒活性より高いことがわかった。この結果は、Mn3O4上の白金の分散状態が異なることに起因していると考えれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に記載した「酸素還元活性における結晶相、ナノ構造および比表面積の影響解明」については、マンガン酸化物に着目して検討を行った。塩化マンガンを用いた試料調製ではMn3O4相が得られ、加水分解時に酸素を供給することでMnO2相が得られやすくなることを明らかにした。また、2種類のマンガン酸化物(MnO2, Mn3O4)を担体に用いて白金担持を試みたところ、同等の比表面積を有し調製履歴の異なる白金担持Mn3O4が調製できることを明らかにした。さらにアルカリ水溶液中での酸素還元活性を検討した結果、MnO2の還元とともに白金を析出担持した試料の触媒活性がMn3O4上に白金を析出担持した試料の触媒活性より高くなることを明らかにした。同一担体上で白金の分散状態が異なると考えられる試料の酸素還元活性について検討できたことから、研究計画の一部を達成できたと考えている。ただし、担体の結晶相や試料の比表面積の制御等までには至っていない。 それ以外にもマンガンを含むリン酸塩の調製とアルカリ水溶液中での電気化学測定を行った。したがって、達成度としては標記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、平成28, 29年度に得られた知見に基づき、マンガン酸化物担体の結晶相の制御と高比表面積化について検討を行う。また「高い酸素還元活性と耐塩基性を示す試料の合成指針の確立」を目指して研究のまとめを行う。当初予定していた「酸素還元活性における結晶相、ナノ構造および比表面積の影響解明」、「遷移金属化合物の高比表面積化」、「塩基性条件下での結晶相とナノ構造の安定性」、「酸化還元反応および酸素還元活性における遷移金属の種類の影響」、「酸素還元活性における遷移金属の価数の影響」などについても検討や実施内容の振り返りを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討内容の変更にともない研究の進捗状況が遅れが生じたため、必要な備品(インピーダンス)と試薬・消耗品の使用で本研究を遂行した。したがって、次年度使用額が生じた。
次年度については、機器分析および消耗品に費用を充てる。また学会発表による旅費を計上する。
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