研究実績の概要 |
最終年度は、前年度までに得られた知見に基づき、マンガン酸化物前駆体沈澱物の結晶構造を調べるとともに、マンガン酸化物前駆体沈澱物の高比表面積化とアルカリ水溶液中での酸素還元活性について検討し、本研究の総括を行った。 沈澱物の結晶構造を調べた結果、本調製法における加水分解時の酸素供給は沈澱物の結晶相には影響せず、主にMn3O4相を含む前駆体沈澱物を生成することがわかった。また、この前駆体沈澱物を800度焼成にするとMn2O3に相転移することがわかった。次に、アルカリ濃度を高くし、急速に加水分解することで沈澱物の微粒子化とそれに伴う沈澱物の高比表面積化を試みた。沈澱物のXRDパターンからは、加水分解速度を上げてもMn3O4相に帰属されるピークの半値幅は大きくなっておらず、結晶子径は低下していないと考えられる。さらに、Mn3O4相以外に同定できない不明相に帰属されるピークが確認された。この結果から、加水分解速度を上げるとMn3O4が安定して生成しないことが考えられる。 調製したMn3O4とMn2O3とともに市販のマンガン酸化物を用いてアルカリ水溶液中での電気化学特性を比べた。その結果、詳細な理由は判明していないが固定原子価状態のMnO, Mn2O3とMnO2相よりも混合原子価状態のMn3O4相で高い酸素還元活性を示す傾向があることがわかった。 以上の結果より、検討した遷移金属水酸化物と酸化物の中でマンガン酸化物がアルカリ水溶液中での酸素還元活性を示す傾向があり、さらに触媒活性の向上には混合原子価状態のMn3O4が好ましいことがわかった。
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