研究実績の概要 |
本研究では圧力をパラメーターとして複合アニオン化合物のアニオン配列と物性を制御するために、合成条件、組成、構造と物性との相関を明らかにし、固体化学的知見を得ることを目的とした。平成30年度は平成28年度、平成29年度に引き続き、既知のA2MPO4F(A=Li, Na, M=遷移金属)化合物について、高圧合成の条件を検討し、相関係を調べた。またMg系のフルオロリン酸塩についても高圧合成により、高圧相の有無を調べた。Mg系のフルオロリン酸塩は固相法により合成した。得られた試料を金カプセルに封入し、キュービックマルチアンビル型高圧装置を用いて、3 -7.5GPa, 600 ℃または1100 ℃で焼成を行った。3GPaで焼成した場合、焼成温度の上昇に伴い格子定数の変化や結晶性の増加が確認されたが、構造変化に由来するX線回折パターンの変化は見られなかった。一方で7.5 GPaで焼成した場合、回折パターンのブロードニングおよび強度比や反射の位置などの回折パターンの変化が見られた。これらの結果から、7.5 GPaでは圧力による相変化が生じていることが示唆された。 本研究によりA2MPO4F化合物については金属イオンの違いにより、相変化挙動が大きく異なり、一部の化合物では常圧相やこれまで知られている高圧相とは異なる相が高圧下で存在することが示唆された。Mn2VO4Fについては、水熱合成の温度条件が生成の主な因子になっており、合成温度の違いによりアニオン配列が不規則になることが分かった。また、Mn2VO4Fの複雑なアニオンの配列は磁気フラストレーションを引き起こし、スピンのキャントによる弱強磁性的な挙動が出現することが明らかとなった。
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