本年度は、酸素還元反応の促進を決めるファクターとしてのPt原子のd-バンドセンターと酸素還元反応速度との間の関係をPt/金属酸化物担持体およびPt合金/酸化チタン担持体の系で検討を行った。初めにこれらのサンプルの合成条件の最適化、合成サンプルのキャラクタリゼーションを行い、酸素還元反応の検討に用いることができるサンプルである、つまり、Ptナノ粒子およびPt合金ナノ粒子の粒子径が等しく、それらのナノ粒子が担持体上に担持されていることを確認した。それらのサンプルを用いて酸素還元反応を行い、速度定数として、0.9 V(vs. RHE)における還元電流値を用いた。d-バンドセンターの値は光電子分光装置(XPS)を用いて測定を行った。酸素還元反応の速度とd-バンドセンターの関係をプロットしたところ、従来予測されているような火山型の関係がみられることが分かった。このことからd-バンドを制御することによって、酸素還元反応の促進が可能であることを確認した。また、その研究結果の中から、火山型の頂点においてはどのようなd-バンドセンターの値になるか、どのような物質がその頂点に位置するかを明らかにすることができた。特に良かった物質はPtNi/TiOxとPt/TiNb6.6Oxの二つのサンプルであった。PtNi/TiOxの場合には、Ni原子が触媒上から溶出し、適度なPtとNiの比率ができる状態において最大活性を示すことが分かった。一方、Pt/TiNb6.6Oxの場合、Ptの溶出がないので、安定した高い活性がえられることが明らかとなった。
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