研究課題/領域番号 |
16K05947
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研究機関 | 公益財団法人豊田理化学研究所 |
研究代表者 |
河本 邦仁 公益財団法人豊田理化学研究所, フェロー事業部門, フェロー (30133094)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 無機有機複合材料 / フレキシブル / 超格子 / 層間剥離 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
今年度は、TiS2/有機複合超格子熱電変換材料の高性能化のため、先ずは高誘電率極性分子のインターカレーションを検討した。これまで最高性能を発現した水(静誘電率~80)から更に高誘電率(~190)のN-メチルフォルムアミド(NMF)に変えて検討を始めたが、TiS2結晶にへキシルアミン(HA)を挿入したのちにNMF溶媒に分散させた途端、TiS2結晶が層間剥離してしまうことを見出し、これまでの方法では複合超格子結晶の合成が不可能であることが判明した。そこで視点を変え、層間剥離で生成するTiS2ナノシートが分散したNMFコロイド溶液を真空乾燥してナノシートを回収しようとしたところ、NMFの蒸発に伴ってナノシートが自己組織化し、超格子構造を持つTiS2(HA)(NMF)のフィルムないしフォイルが自然に形成されることを偶然見出した。このフォイルの熱電特性を調べたところ、熱電出力因子はTiS2単結晶に比べて低下するが、熱伝導率の低下がそれを上回るためにZTが室温で約0.1まで上昇することが観測された。さらに、このフォイル、フィルムは力学的にフレキシブルであることが分かった。 そこで、上記の方法は常温・常圧のマイルドな条件下で大面積フィルムを作製できる低コストな溶液プロセスであることを提案し、LESAプロセス(Liquid Exfoliation & Self-Assembly Process)と命名した。このLESAプロセスで作製したn型フィルムと別に作製したp型導電性高分子フィルムを用いてフレキシブルπ型熱電薄膜モジュールを試作し、フレキシブルモジュールとしては世界最高の発電密度(2.5 W/m~2@ΔT=70K)を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LESAプロセスの発見は当初予期していなかった。溶液プロセスで大面積フィルムを簡単に作成できるこのプロセスは、他のTMDCなどにも適用が可能な低コストの画期的プロセスである。これを用いて作製したπ型熱電薄膜モジュールは世界最高の発電密度を持つことを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、無機/有機複合超格子の組成・構造制御により高ZT化を実現するため、低分子量有機カチオンの導入と波状超格子の形成による熱伝導率の低下、2種の有機カチオンの導入によるキャリア濃度の最適化などの研究を進める。さらに、H28年度に開発したLESAプロセスを適用して、高性能の薄膜モジュールを実現していきたいと考えている。
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