研究課題
無機有機複合超格子の常温熱電特性をさらに向上させるためには超格子の構成層であるTiS2層の熱電特性を上げることが必要なことが、昨年度までの研究で明らかになった。そこで、本年度はTiS2にAgSnSe2を複合化することによる性能アップの可能性を実験的に検討した。少量添加したAgSnSe2が部分的にTiS2へインターカレーションすることにより、熱伝導率を大幅に下げられること(1.0 W/mK @ 700 K)、またキャリア濃度の増加により導電率は上昇することが分かった。さらに、キャリアの不純物散乱が高温で顕著に起こることによってゼーベック係数が増加することが判明し、パワーファクター(出力因子)は700 Kにおいて~1.55 mW/mK2を達成した。最終的に無次元性能指数ZT~0.8 @ 700 Kが得られた。この値はこれまでに得られていた記録の約2倍に相当する極めて高い値である。この結果は、高性能なTiS2‐AgSnSe2コンポジットを無機層に適用することにより無機有機複合超格子の熱電特性を更に向上できることを示唆している。TMDCの代表格であるMoS2及び最高熱電性能を誇るSnSeについても有機分子のインターカレーションの可能性を検討した。いずれも2次元層状構造を取り層間はファンデルワールス力等で弱く結合していて、有機分子のインタカレーションが着実に起こることを実験的に突き止めた。熱電特性等を含めて詳細は今後の研究を待たねばならないが、複合超格子の拡大展開が期待できることを示すことができたと考えている。
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