研究課題/領域番号 |
16K05954
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60423240)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナトリウムイオン電池 / ルチル型酸化チタン / 不純物ドープ |
研究実績の概要 |
これまで研究代表者は,特異なLi拡散能(c軸異方性)を有し,圧倒的に低コストでもあるルチル型酸化チタン(Rutile TiO2)に着目してきた.その合成にはゾル-ゲル法を用いており,粒子サイズに対する結晶子サイズの割合を高めること,およびNbをドープすることで,実用化された実績を有するLi4Ti5O12負極をしのぐ高速充放電性能を引き出せることを見出してきた.これは,TiO2負極の電子伝導性が向上したことに加え,その粒子の内部にまでLiが容易に拡散できるようになったためと考えられる.他方,このNb-doped TiO2はLIBだけでなくナトリウムイオン電池(NIB)の負極としても良好な性能を示すことを発見している.そこで,本年度の研究では,より高い結晶性の試料を得るために水熱合成法を採用し,調製した試料のNIB負極特性を調べた.その結果,ゾル-ゲル法の場合の3倍以上の結晶子サイズ(結晶性)を有する試料が得られ,特に,反応時間が6 hの場合に最も結晶性が高くなることがわかった.一方,粒子サイズは3 hから6 hにかけて増大し,それ以上の反応時間では変化が見られなかった.反応時間6 hの試料からなる電極が最も良好な性能を示した.反応時間が3 hのときはTiO2へのNbのドープ量が少ないため,6 hの場合の電極に劣る性能を示すことがわかった.他方,反応時間を12 hに延ばした場合においても性能の改善は見られなかった.これは,TiO2の結晶性が低下し,粒子の内部にまでNaが拡散しにくくなったためと考えられる.反応時間6 hで合成した場合の電極は,Nbが充分にドープされ,結晶性と粒子サイズのバランスが最も良かったため,良好な性能を示したものと推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の最重要項目である,『TiO2の結晶構造の制御による負極性能の改善』について極めて重要な知見を得ることができたため.この成果を既に論文や学会等で発表している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとにして,さらなる負極性能の向上を目指すとともに,他の試料調製法や不純物元素のドーピングについても検討したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集を予定していた学会等に招待講演として招かれたため,当初予定していた金額よりも少ない旅費で学会出張を行えたため.また,実験を順調に進めることができたことで,試薬費用の節約に成功したため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の試薬代や国際学会の旅費等に使用したいと考えている.
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