研究課題/領域番号 |
16K05955
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
前田 幸治 宮崎大学, 工学部, 教授 (50219268)
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研究分担者 |
鈴木 秀俊 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00387854)
境 健太郎 宮崎大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (20336291)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | X線照射 / イオン価数変化 / サマリウム / 硫酸バリウム / フォトルミネッセンス / X線ルミネッセンス / ラジオフォトルミネッセンス / 希土類 |
研究実績の概要 |
サマリウム(Sm) を添加した硫酸バリウム(BaSO4)を固相反応法で作製し、その試料にX線照射を行い、その後のSmイオンのPL発光を調べた。試料は、焼結体から直径5mm、厚さ2mmに削りだし、X線はCuKα線(45kV、40mA)を用いて1秒から1時間照射した。PL測定は405nmのレーザで励起した。2018年度は、これらの光測定装置などの立ち上げを行った。 酸化雰囲気で作成した試料では、X線照射前は、Sm3+のみからのPLが得られ、照射後はそれに加え、強いSm2+のPLが得られた。Sm2+のPL強度は、約720秒までのX線照射では、照射時間に比例して増加した。その後は、飽和する傾向が得られた。これらの結果は2016年度に行った実験の再現性の確認となり、さらに詳細な実験結果が得られた。一方、Sm3+のPL強度はX線の照射に関わらず、一定であった。得られた価数変化したSm2+イオンは数ヶ月間の空気中での保存では、安定であった。 また、X線照射中のXL発光のその場観測では、酸化雰囲気で作成した試料では、Sm2+、Sm3+の両方のスペクトルが得られた。この時間依存性は未だ測定できていない。一方還元雰囲気で作製したSm2+のみ含まれる試料のXLでは、Sm2+のXLは得られなかった。 これらの結果より、① 3価のサマリウム添加硫酸バリウムにX線を照射すると2価に価数変化することが確認できた。② X線照射により、3価のサマリウムは2価のサマリウムの発光を示し、2価のサマリウムは発光しないことが考えられるが、現在検討中である。 これらの成果は2017年3月の第64回応用物理学会春期学術講演会で発表し、議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験で行っていたサマリウム添加硫酸バリウムの系でSm3+からSm2+へのX線照射による価数変化を確認できた。また、その照射時間依存性を明らかにできた。一方で、SmイオンのXL発光に関して予想していなかった興味深い結果が得られた。これについては、追加して今後研究を行う。 その他の系として、ホウリン酸塩系を母材とした蛍光体の作製を行った。2019年度はこの系についてのX線照射と希土類の価数変化を調べる予定である。 こられのことから、順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はホウリン酸塩にSmを添加した系に対してX線照射による価数変化を調べ、硫酸バリウム系との相違点、類似点を比較することで、母材の影響を調べる予定である。また、ホウリン酸塩系以外の酸化物でも価数変化する母材を調査、作製する。 X線による価数変化のメカニズムは、母材の変化だけでは難しく、励起源を変える必要を検討しなければならないかもしれないと考えている。Eu系などの文献調査を行って、他の放射線などの照射も考えてみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費決定前に、購入予定のビデオカメラによるその場発光観察装置を別予算で購入できることになり、当初の購入計画を変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に購入予定であった光検出装置において、より高性能のグレーティングと光検出器を購入する。 また、フィルター等測定光学系を充実させ、高感度で光ノイズの少ない光学系を構築する光学部品の購入に充てる。
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