研究課題/領域番号 |
16K05958
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
稲葉 稔 同志社大学, 理工学部, 教授 (80243046)
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研究分担者 |
橋之口 道宏 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (60377801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素エネルギー / アンモニア / 固体酸化物形燃料電池 / アノードサーメット / ニッケル合金 |
研究実績の概要 |
平成28年度はアンモニア燃料に対して活性の高いNi-Fe系ならびにNi-Mo系触媒の開発で得られた知見を基に新たに開発したNi-W、Ni-Ta、Ni-Ti系触媒の最適化を行い、Niに対するW, Ta, Tiの含有量が約3%の時にもっとも高い発電性能が得られることが確認された。また、窒化物形成が知られているVやCrに着目し、新たにNi-V, Ni-Cr系燃料極触媒の作製と電気化学的な評価を行った結果、アンモニア酸化活性の向上が確認された。 開発した高活性燃料極触媒の低温(500℃以下)での性能評価を行うためには、低温領域での電解質のイオン電導度低下の問題を解決する必要がある。そこで、今年度は従来から用いているランタンガレード系電解質(La0.90Sr0.10Ga0.80Mg0.20O2.85, LSGM)の薄膜化(90マイクロメータ)により、500℃程度の低温でも発電試験評価が可能となり、500℃においてNi-Fe, Ni-Mo系触媒は、Niのみを用いた燃料極と比較して2倍以上の高い活性を持つことが確認された。 作動温度の低温化に向けて、新規高酸化物イオン伝導体Sr3-3xNa3xSi3O9-1.5x (SNS)を検討したが、焼結が難しいこと、また酸化物イオンが動きにくく、主にNaイオン伝導性であり、燃料電池の電解質としては用いることができないことが判明した。そこで、新たに500℃程度で十分実用化が可能なイオン伝導度が報告されているBaCe0.55Zr0.3Y0.15O3 (BZCY)系高温プロトン伝導体を用いるアンモニア燃料電池の開発にも取り組み、600℃で3x10-3 S cm-1のプロトン伝導度が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで開発したNi-M合金系触媒が500℃においてNi触媒の2倍以上の高い活性を持つことが示され、低温下に適した触媒であることが示された。実用的にはさらに高活性な触媒が望まれるため、次年度以降も続けて合金系触媒の開発を進める予定にしている。 セルの低温化に関しては触媒性能に加えて、低温での電解質のイオン伝導性の向上が不可欠である。当初計画では新規高酸化物イオン伝導体Sr3-3xNa3xSi3O9-1.5x (SNS)を用いる予定であったが、上述のようにアンモニア燃料電池の電解質として使用することが難しく、新たにBaCe0.55Zr0.3Y0.15O3 (BZCY)系高温プロトン伝導体を電解質として用いるセルの開発を進めている。焼結助剤として、NiOを用いるなどにより焼結性を高め、プロトン伝導性の向上が可能となったが、現状では得られた電解質のプロトン伝導度は文献値の約1/3であり、さらなるイオン伝導度の向上が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに開発した触媒を超える窒化物系高活性触媒として、新たにNi-Y, Ni-Sc系電極触媒について検討を行うとともに、低温での発電特性を評価する。また、アンモニア酸化反応に対する添加金属の影響に関して、学術的観点からも考察を進める。 作動温度の低温化に関しては、平成28年度に開発を始めたBaCe0.55Zr0.3Y0.15O3 (BZCY)系高温プロトン伝導体の作製法をさらに検討し、文献値程度のプロトン伝導度を有する電解質を得る。また、電極構造ならびにセル全体の構造を検討し、プロトン伝導体を用いたアンモニア燃料電池を試作し、発電特性の評価を行う。
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