今年度は酵素燃料電池の集電材として用いるナノ炭素材料に、前年度までに用いてきたケッチェンブラックのほか、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、シングルウォールカーボンナノホーン(SWCNH)、食用竹炭について検討を行った。まず電極として用いるカーボンクロスに上述のナノ炭素材料の分散液を塗布して電子顕微鏡で観察したところ、カーボンクロスを構成する太さ約15 μmの炭素繊維上にMWCNTは複雑に絡まった網目状凝集体、SWVNHは粒径が40~80 nmの球状凝集体、竹炭は粒径が0.5~1 μmの球状体が付着していた。CNT、SWCNHは炭素繊維上の一部に凝集体の島を形成し、分布に粗密があるのに対して、竹炭は比較的まばら、かつ均一に分散し、ナノ炭素材料の種類によって分散性に違いが観測された。 次に上記のナノ炭素材料を修飾したグラッシーカーボン電極(GC電極)にビリルビンオキダーゼ(BOD、カソード酵素)、メディ―ター、アミノ基含有高分子を塗布し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定での電流値への影響を調べた。その結果、観測された電流値は、MWCNT>SWCNH>竹炭であった。ナノ炭素材料を修飾したGC電極にフルクトースデヒドロゲナーゼを固定してフルクトース溶液中でCV測定を行った結果、SWCNHでは酵素反応由来の電流値が観測されたのに対して、SWCNTおよび竹炭ではほとんど電流値が観測されなかった。 また、人工型耐熱性BODをカソード酵素として用いてCV測定を行ったところ、由天然型のMyrothecium、Bacillus Subtilis由来BODでは有効であったメディエーターの添加が不要であった。酵素からの電子移動は電極上での酵素の配向の影響が大きいことから、耐熱性BODは電子移動にかかわる部位が電極により近い位置に配向することが示唆された。
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