研究課題/領域番号 |
16K05961
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
柴野 純一 北見工業大学, 工学部, 教授 (60206141)
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研究分担者 |
吉田 裕 北見工業大学, 工学部, 准教授 (30626122)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 単結晶 / 延性損傷 / 転位密度 / プロファイル解析 / 装置関数 / 白色X線 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで検討してきた放射光白色X線によるプロファイル解析手法を基に、単結晶内部の特定された結晶方位から得られる単一の回折X線プロファイルから、延性損傷パラメータとして転位セルサイズ、転位密度などの情報を得るための手法を開発する。 平成29年度は、1)測定装置や測定方法に依存する装置関数の評価法の検討、2)放射光白色X線の透過回折X線プロファイルから装置関数を分離する方法の検討、3)転位セルサイズ、転位密度の評価法の構築などを行った。試験片には,結晶方位〈111〉と〈110〉が負荷方向に対してそれぞれ45°傾き、平行部中央の両側に幅0.4mm,深さ0.3mmのノッチを有するアルミニウム単結晶を用いた.引張り負荷による延性損傷を導入した場合の転位セルサイズや転位密度について、放射光施設SPring-8で行った白色X線法とTEM観察による結果を比較検討した。その結果、以下のことが得られた。転位セルサイズについては、白色X線法ではノッチ近傍で小さく、離れるに従って大きくなる傾向が見られた。一方、TEM像より得られた転位セルサイズは、ノッチ近傍から離れるに従って大きくなる傾向は示したが、白色X線法によって得られたサイズに比べ小さくなった。これは測定領域の違いも原因の一つと考えられたが、白色X線法では転位セルサイズが大きく評価されることがわかった。転位密度については、白色X線法により得られた結果は、ノッチ近傍から離れるに従って増加傾向となりピーク(約3.5×10^14/m^2)を示した後は減少傾向を示した。一方、高倍率のTEM像からHAMの関係式により算出した転位密度も増加、減少の傾向を示した。しかし、最大で約1.0×10^14/m^2と白色X線法に比べ1/3程度になった。TEMによる転位密度評価においては、サンプル作製過程で転位が減少する影響が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、平成28年度に放射光施設SPring-8で行う予定だった実験も含めて実施したため、当初実験予定のシリコン単結晶については測定していないが、アルミニウム単結晶の測定からシリコン単結晶を用いなくても装置関数の検討も可能であったため、今年度に予定していた検討項目である1)測定装置や測定方法に依存する装置関数の評価法の検討、2)放射光白色X線の透過回折X線プロファイルから装置関数を分離する方法の検討、3)アルミニウム単結晶の転位セルサイズ、転位密度の評価、については実施できている。しかし、最密六方晶HCPであるマグネシウム単結晶試料については実施できていない。そのため、全体としては当初の予定よりやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、放射光施設SPring-8における実験と透過型電子顕微鏡TEM観察による比較を行い、1)測定装置や測定方法に依存する装置関数の評価法の検討、2)放射光白色X線の透過回折X線プロファイルから装置関数を分離する方法の検討を行った。実際に、面心立方晶FCCとしてアルミニウム単結晶の転位セルサイズや転位密度を評価した。その結果、TEMによる転位密度評価では、サンプル作製過程での転位減少が検討課題として残った。平成30年度は、これらの検討を継続するとともに、最密六方晶HCPとしてマグネシウム単結晶試料を用いた延性損傷評価を行う。結晶方位が明らかなマグネシウム単結晶をSPring-8において負荷(引張り、曲げ)を掛けながら白色X線を照射し透過した回折X線プロファイルから転位セルサイズや転位密度を評価する。双晶の発生による転位密度への影響なども検討する。また、TEMによる転位分布観察結果との比較検討を行う。各結晶系の単結晶における延性損傷評価手法としての本法の有用性を確認する。 本研究により、1)放射光白色X線を用いた単結晶延性損傷評価法の構築、2)放射光白色X線を用いた単結晶延性損傷評価法の高精度化、3)放射光白色X線を用いた単結晶延性損傷評価法の有用性の検証を行い、結晶内部の延性損傷進展挙動に関する放射光白色X線による実験・解析手法の確立を図る。
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