H30年度は、最密六方晶HCPとしてマグネシウム単結晶試料を用いた延性損傷評価を行った。まず、結晶方位が明らかなマグネシウム単結晶に4点曲げ負荷し塑性変形させた。除荷後の試験片にSPring-8において白色X線を照射し透過した回折X線プロファイルから延性損傷状況を評価した。測定の結果、0002面(底面)における白色X線の透過回折X線積分強度分布が圧縮側で高い分布を示し、引張り側ではほとんど見られなかった。この原因として、双晶の発生が考えられたが、実際にTEMで観察したところ、双晶の発生が確認できた。また、透過回折X線積分強度からマグネシウム単結晶内部における非底面すべりの発生などが推測できることが明らかとなった。これまでの研究成果をまとめ、単結晶内部の延性損傷進展に関する放射光白色X線による評価手法としての有用性を検証した。 本研究では、放射光白色X線によるプロファイル解析手法を基に、単結晶内部の特定された結晶方位から得られる単一の回折X線プロファイルから、延性損傷を評価する手法を検討した。平成28年度~30年度において、1)測定装置や測定方法に依存する装置関数の評価法の検討、2)放射光白色X線の透過回折X線プロファイルから装置関数を分離する方法の検討、3)転位セルサイズ、転位密度の評価法の構築などを行った。実際にアルミニウム単結晶に引張り負荷による延性損傷を導入した場合の転位セルサイズや転位密度について、放射光施設SPring-8で行った白色X線法とTEM観察による結果を比較検討した。その結果、白色X線法では転位セルサイズが大きく評価されること、転位密度については、TEMによる測定結果に比べ高い値を示したが分布については定性的に一致することが明らかとなった。単結晶内部の延性損傷評価において本手法の有用性が確認できた。
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