研究課題/領域番号 |
16K05962
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
高橋 護 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90261651)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ダイヤモンド皮膜 / 材料加工・処理 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本研究では,歯科用インプラントの表面の硬質化による強度ならびに生体適合性の向上のため,燃焼炎法により界面はく離を抑制しながらナノ結晶ダイヤモンド皮膜をインプラント材料上に合成し,皮膜の接合強度の評価を行い,さらに,実際に使用されている歯科用インプラント表面にナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を行い,インプラントの破壊強度の評価を行う. 本年度は,現有設備である燃焼炎法によりダイヤモンドを合成することが可能な実験装置を使用し,現在,歯科用インプラントとして主に使用されているTi基板上に燃焼炎によりダイヤモンド皮膜の合成を行った.ここで,基板の表面形状がダイヤモンド皮膜の接合に影響を与えることがわかっている.そのため,ダイヤモンドを合成する前にTi基板の前処理として基板表面のスクラッチング処理を施し,基板表面の粗さを変化させ合成を行った.さらに,申請者らは皮膜の表面温度を合成中に段階的に変化させる合成法を提案し,接合強度が高いダイヤモンドを合成してきた.そこで,この段階的に温度を変化させる方法を用いてTi基板上にダイヤモンドの合成を行った.ここで,通常のアセチレン-酸素ガスならびに高純度アセチレン-酸素ガスに窒素を添加したガスを用い,現在までの研究で得られている合成条件を適用し合成を行った.また,燃焼炎の白心から基板表面までの距離等の合成条件も変化させ合成を行った.この際,合成後にTi基板上に合成された皮膜がはく離してしまう現象が発生したが,皮膜を合成することができた.また,合成された皮膜を走査型電子顕微鏡等によりその結晶形状等の特性を評価した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,現有設備である燃焼炎法によりダイヤモンドを合成することが可能な実験装置を使用し,Ti基板上に燃焼炎によりナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を目的に実験を行った.ここで,ダイヤモンドを合成する前にTi基板の前処理として基板表面のスクラッチング処理を施し,基板表面の粗さを変化させ合成を行った.また,皮膜の表面温度を合成中に段階的に変化させる合成法を用いてTi基板上にダイヤモンドの合成を行った.ここで,通常のアセチレン-酸素ガスならびに高純度アセチレン-酸素ガスに窒素を添加したガスを用い,現在までの研究で得られている合成条件を用い合成を行った.さらに,燃焼炎の白心から基板表面までの距離等の合成条件も変化させ合成を行った. この際,合成後にTi基板上に合成された皮膜がはく離してしまう現象が発生したが,皮膜を合成することが可能となった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,膜の表面温度を合成中に段階的に温度を変化させる方法を用いて,添加する窒素の流量,ならびにダイヤモンド結晶の成長速度をコントロールできる燃焼炎の白心から基板表面までの距離をさらに変化させ,Ti基板上に,燃焼炎法によりはく離を抑制したナノ結晶ダイヤモンドが合成可能な最適値を求める. また,現有設備である引っかき試験装置を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したTi基板の引っかき試験を行い,はく離が生じる限界荷重を測定する.得られた限界荷重と引っかき痕からせん断応力を求め,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したTi基板の接合強度を定量的に求める.この際,ダイヤモンド皮膜が生体材料として適用可能か実験的に評価するため擬似体液に浸した皮膜と浸さない皮膜の接合強度を測定し,その変化を調べる. 実際に使用されている歯科用インプラントの形状に対して既存の現有設備では,インプラント表面の周辺全体(スクリュー部分)にダイヤモンド皮膜を施すことが難しい.そこで,全体にまんべんなくナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施すために現有設備である実験装置に改良を行う.ここで,インプラント表面の周辺全体にダイヤモンドを合成することを可能にするために,上下移動ならびに回転発生用ステッピングモータ駆動ステージ上,支柱に取り付けた歯科用インプラントを取り付け,上下回転可能な状態に改良する. 改良を行った実験装置を用いて,実際に使用されている歯科用インプラント表面の周辺全体に,これまで得られたダイヤモンド皮膜を合成可能な最適条件を用い,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を行う.
|