火力発電プラントのボイラー配管や航空エンジンのタービン動翼等に代表される高温構造機器では,その健全性保証のために多軸応力状態でのクリープ損傷評価が要求される。この問題解決のために,本研究課題では,新たな高温多軸クリープ実験手法の確立と高精度な寿命評価式の提案を目標として遂行した。 具体的な内容として,①一辺が50mmの小型十字型試験片を用いた高温多軸クリープ実験手法の確立,②高温多軸クリープ寿命評価式の開発,を設定して取り組んだ。 ①について:実験力学的手法によって高精度な高温多軸クリープ寿命評価式を開発するために,とくに試験片の形状寸法に着目した。十字型試験片のX軸およびY軸の二軸方向に荷重を負荷する手法は,実験室で模擬できる多軸応力状態範囲が広いメリットを有していることから,同試験片を用いたクリープ実験を遂行した。さらに,試験片寸法の小型化は,評価対象素材が少なくて済むことや実機の任意の局所位置からの素材採取を可能とする等,多くのメリットを有していることから,60mm×60mm×10mmの素材から機械加工が可能な十字型試験片の形状および詳細寸法を決定した。また,同試験片用の小型の高温多軸クリープ試験装置の設計開発を行い,H30年度末までにその試験装置製作を完了した。併せて,クリープ試験中の十字型試験片の変位を非接触式で計測する手法も開発した。 ②について: 設計開発した小型十字型試験片と専用のクリープ試験装置を用いた試験を行い,多軸クリープ実験手法の確立を確認した。系統的な実験によってデータの蓄積を図るとともに適切な多軸クリープ寿命評価式を開発した。
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