研究課題/領域番号 |
16K05977
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三上 欣希 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40397758)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素割れ / 水素拡散 / ミクロ組織 / 微視的応力 |
研究実績の概要 |
1. 二相ステンレス鋼の多層盛溶接金属の製作およびミクロ組織観察:二相ステンレス鋼の多層盛溶接継手を製作し,溶接金属試料を準備した.ミクロ組織観察を行い,母材とは大きく組織形態が異なることを確認した. 2. 複相鋼のミクロ組織のモデル化手法の構築:二相ステンレス鋼のミクロ組織写真に基づいて,有限要素モデルを作成する手法を構築した.本手法により,平成28年度は相の厚さや長さなどをパラメータ化して体系的に作成していた二相組織モデルに加え,実材料のミクロ組織形態に対する数値解析を実施することが可能になった. 3. 二相ステンレス鋼母材および溶接金属の水素チャージ試験および低ひずみ速度引張試験:二相ステンレス鋼母材および溶接金属に対し,電気化学的に水素チャージを行った.その際,チャージ電流やチャージ時間を変化させ,チャージされる拡散性水素量に及ぼす影響を把握した.その結果,所望の拡散性水素量をチャージできる条件を見出すことができた.この水素チャージ条件の下で,二相ステンレス鋼の母材および溶接金属について水素チャージを行った後に,低ひずみ速度引張試験を実施した.対照材として,水素未チャージ材の試験も実施している.その結果,母材および溶接金属,水素チャージの有無によって,巨視的な破断形態や微視的な破面様相が大きく異なっていることが確認できた.二相組織における水素割れを特徴付ける破壊形態が得られたものと考えており,詳細な観察を実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値解析による検討については,すでに,水素拡散特性および強度特性が異なるミクロ組織によって構成される材料モデルにおける水素拡散挙動の数値解析手法を構築することができていたが,ミクロ組織形態がやや実材料との乖離があるものであった.今年度は,ミクロ組織形態についても,母材および溶接金属の観察結果に基づいて作成する手法を構築することができ,数値解析手法そのものについては,ほぼ構築を完了したと判断している. 実験による検討については,水素チャージ条件を明確にすることができ,チャージする拡散性水素量を制御することが可能になった.これは実験を実施するうえで重要な進展であった.また,水素チャージ後の低ひずみ速度引張試験ならびに破面観察まで完了し,二相ステンレス鋼における水素割れの特徴を明らかにするための実験結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
数値解析による検討については,実際の二相ステンレス鋼母材および溶接部のミクロ組織に対して,拡散性水素の集積および応力・ひずみ集中部を数値解析により検討していく. 実験による検討については,これまでに実施した破面観察に加えて,低ひずみ速度引張試験後の試験片について断面観察を行い,ボイドや割れの発生位置の同定を進める. さらに,実験結果および数値解析結果の比較・考察により,水素拡散特性および強度特性が異なるミクロ組織によって構成される二相ステンレス鋼における水素割れの発生挙動や発生特性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:水素割れ試験について,いくつかの条件において試験が難しいことが判明し,実施できなかったため. 使用計画:試験上の問題はすでに解決しており,次年度に残る試験を実施する予定としている.
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