研究課題/領域番号 |
16K05978
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 拓 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (80236629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 構造・機能材料 / マイクロマシン / 金属物性 / 引張圧縮費用 |
研究実績の概要 |
本研究は,マイクロマシンやMEMSにおいて用いられる極微小な断面を有する金属マイクロエレメントを想定し,その疲労寿命と疲労破壊特性を明らかにするために,従来行われていた曲げ疲労試験に替わり,新たに引張圧縮疲労試験法を開発することを目的としている. 本年度は微小断面の金属細線に対して疲労試験を行うことができる微小疲労試験システムの作製,および圧縮応力時に座屈せず引張圧縮疲労試験を行うことができる試験片作製方法の開発に取り組んだ.微小疲労試験システムは小型加振器により負荷を与える形式とし,ファンクションジェネレータの正弦波をバイポーラ電源で増幅したものを制御信号として加振器に送り,微小ロードセルで測定した試験力を用いてフィードバック制御を行う.本年度では2台の微小疲労試験システムを作製した. 微小断面の金属細線試験片の作製には幾つかの方法を試み検討した.試験片つかみ部からの破壊を防ぐために,試験片はやや太めの金属線から,中央部に微小な最小断面部を電解研磨加工により設ける.まず,金属線の一端を保持した状態でぶら下げもう一端を電解研磨液に漬け,金属線を上下に動かすことで特定部分の研磨を促進し,微小な最小断面部を設ける手法を検討した.この場合,作製した試験片を疲労試験機にセットするまでに最小断面部が曲げ損傷を受けないようにする点が問題となる.この方法では,最小断面径が約100μm程度までは試験片作製が可能であったが,それ未満の最小断面径では曲げ損傷を防ぐことが困難であった.そこで現在,金属線を先に疲労試験機にセットしてから両端のつかみ部の間を電解研磨する手法を試みている.純鉄細線に対して線径100~700μmの範囲で変えて疲労試験を開始している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通り,極微小断面を有する金属細線試験片に対して疲労試験を十分な精度で実施できる微小疲労試験システムを構築できた.2台の試験システムを作製できたことにより,今後複数の試験片に対する試験を並行して実施することができ,すでに実際に純鉄試験片を用いた疲労試験を開始している.試験片作製方法の開発については,線径100μmまでは計画より簡単な方法で試験片を作製できることが明らかとなった.ただし,それ未満の極微小断面の試験片作製方法は現在試行段階であるため,計画よりもやや遅れているという評価が妥当といえる.
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今後の研究の推進方策 |
最小線径が100μm以上の範囲では,前年度の疲労試験を引き続き行う.得られた結果に対して,最大圧縮応力/最大引張応力比がS-N曲線に及ぼす影響を明らかにする.最小線径が100μm以上は極微小断面とは言い難いが,熱処理により結晶粒径を大きい試験片を作製すれば,極微小断面で現れると予想される疲労寿命の結晶方位による統計的ばらつきについて検討できる可能性がある.並行して,最小断面径は30μmを目標として極微小断面の試験片作製を試みる.現在検討している金属線を先に試験機セットしてから電解研磨加工する方法は有望と思われる. 課題のひとつは,より細い試験片では座屈を防ぐためにゲージ長さもそれに応じて短くしなければならず,狭い領域での電解研磨が表面張力によってうまくいかない可能性である.その場合は,界面活性剤の使用など,電解研磨液の組成を中心に検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,疲労試験システムに組み込む予定で見積もりを取得した変位計が年度内に納品できなかったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は予定通り変位計にあてることとし,翌年度分の使用計画には影響しない.
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