研究課題/領域番号 |
16K05979
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西野 秀郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50316890)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波計測 / 非破壊検査 / ガイド波 |
研究実績の概要 |
本研究は,ガイド波を用いて50メートル超の範囲を効率よく欠陥検出するため,送信センサを固定し,受信センサを移動しながら検出する方法の構築を行う。送信ガイド波には,周波数による速度変化の無いT(0,1)モード波を用いる。本研究では,超長距離伝搬のガイド波を用いた実験と検証を行う必要があるが,実際にはスペースなどの関係で実行不可能である。そこで直径114mmの配管を19mmにスケールダウンした配管で計測を模擬することとしている。この場合,周波数は5倍を用いている。前年度までに,独自のガイド波用センサを作成し,大規模シミュレーションも行いスケールダウンした配管での実験の模擬制度の検証を行って来た。その結果,実サイズの場合と同じ伝搬挙動を得ることが出来ている。昨年度までに実験環境が整っている。本年度の実施課題は,大きく2点である。一つは長距離の配管伝搬を取扱う際には配管を溶接することが一般的であるため,溶接線を通過する際の挙動を理解し,その挙動をスケールダウン配管にて模擬実装する必要がある。もう一つは,実際に欠陥を導入し,超長距離模擬配管において検出精度を取得し評価することである。1つ目に関しては,溶接線反射率の実測を行った。その結果より軸対称ノッチを模擬配管に導入することで,模擬溶接線が導入できることを示せた。2つめは,人工欠陥を導入することで検出精度の評価を行うことができた。得られた結果からは,定尺長さごとに検出点を設けることで超長距離計測が可能であることを示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超長距離の効率的なガイド波による計測を可能とする方法の検討を行っている。そのため,超長距離伝搬を研究室レベルで検証するための方策として1/5サイズのスケールダウン実験の実現できる環境の構築を行っている。周波数5倍で小口径に対応したセンサは世の中に存在しないため構築した。加えて,超長距離では配管中にかならず溶接線が存在するため,この伝搬挙動として反射率と透過率を実機サイズで計測し,反射率4.88,透過率0.99であった。この反射率と透過率をスケールダウン配管にて実現するために,軸対称で減肉深さ0.34 mmの亀裂状欠陥をパイプカッターにて導入することで模擬可能であることを示し,以後の実験で用いることとした。また,人工の漸増欠陥をもちいた検出感度の取得実験を行なった。スケールダウン配管には,ステンレス外径19mmで肉厚1 mmの配管を用いた。減肉は,直径1.5 mmのボールエンドの超硬カッターで減肉深さ0.1 mmから0.5 mmまで漸増して取得した。最大減肉深さ0.5 mmは,板厚の半分までが実機において修繕可能なふかさであるため設定している。欠陥部により近い検出点ほど欠陥信号が大きくなるため,どの程度近い必要があるのかの評価を行なった結果,0.1 mmの欠陥深さにおいても,定尺分まで十分に検出できることを示すことができた。研究開始前までには,数100 mm程度の検出間隔が必要と推定していたが,より高い効率で計測が可能であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検出感度の実験的取得を受けて,その検出のメカニズムの合理的解釈を実施する必要がある。本実験系の詳細な大規模シミュレーションを実施する。本年度得られた検出感度は,当初の想定値よりも比較的高い結果である。これは,実機にて計測需要の高い埋設配管においても適用の可能性が見込まれる。高減衰配管での実験的検証を行うこととする。また,レーザー干渉計による計測を実施することで,多点計測を容易にできることは,当初の申請書にも記載している。このことの実験的検証を行いたい
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する試験配管が既に現有品として保持していため,購入せずにすんだため,次年度には試験片費用および欠陥作成費用として利用する。
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