平成30年度当初は,前年度までに完成していた平面的な任意前縁形状を持つ3次元き裂の応力拡大係数を高精度解析するシステムならびに平面3次元き裂が同一面内で合体する様子をシミュレートするメッシュフリーな計算システムを拡張した。結果としてき裂面データを要素を使わずに表現する方法では複雑なき裂面の凹凸や,き裂合体時の交叉曲線を表現するために莫大な節点データが必要であることが分った。そこで平成30年度後半は標準型集中力が任意の三角形面に及ぼす合力を解析的に閉じた形で求めることとした。結果として、凹凸を有する3次元き裂問題や、同一平面上にない3次元き裂同士の合体を解析できる新しいシステムの構築が可能であることが分かった。 以下に補助事業期間全体にわたる成果を示す。 平成28年度は3次元き裂の伝ぱ拡大の様子を要素分割を用いることなく、メッシュフリー解析が可能となるよう拡張した体積力法に基づき、き裂伝ぱ計算を実行するシステムを開発した。本法によれば、き裂面の要素分割を完全に無くした状態で、応力拡大係数が正確に計算できる。また導入したワークステーション上でき裂伝ぱ解析が高速に実施できるよう調整した。平成29年度は前年度に開発したシステムを用いて、シリコン内部にレーザーを集光させて作成した微小き裂群が次第に合体しながら拡大する様子を予測した。その際、シリコン内部のレーザー集光を考慮し、熱応力場を見積もるために熱物性値の温度依存性を考慮した伝熱・熱応力問題を差分解析した。平成30年度はこれらを総合して、き裂の進展を制御し、シリコン内部に超高強度平滑面を創るためのレーザー加工シミュレーションシステム全体を構築した。シミュレーションにより得た種々の知見をもとにレーザー加工を実施し、予測した最適加工条件の有効性を実験的に確認することが今後の課題である。
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