Sonic-IR法は,被検体を超音波加振した際に欠陥界面で生じる摩擦熱を赤外線カメラで検知して,欠陥を検出する手法であり,従来技術では困難な閉口欠陥の非破壊検出が可能である.本研究では,このSonic-IR法に着目し,被検体の固有振動を利用した,簡便,高精度,高能率で大型の検査対象にも適用可能な新手法の確立を全体構想における最終目標とし,その基礎研究として,摩擦発熱と固有振動の関係を明らかにすること,その結果をもとに新手法の基本構想を立案することを研究期間内の目的とした. 28年度には,実験の容易な疑似欠陥を用い,加振条件や欠陥位置等を種々変化させ,欠陥部での摩擦発熱挙動に被検体の固有振動が強く関与することを確認した.29年度は,検査対象を疲労き裂とし,まず,固有振動の腹を加振すると,き裂部での発熱が大きく,節を加振すると小さくなることを示した.つぎに,加振条件を種々変化させた際の,き裂部での発熱,き裂近傍の振動加速度,振動計測結果に対する高速フーリエ変換処理結果および有限要素法による固有振動モード解析結果から,き裂部での発熱に影響を及ぼす主要な振動モードを特定した.30年度には,異なる位置に導入した複数の疲労き裂で同様の検討を行い,き裂部での発熱に影響を及ぼす主要な振動モードは,き裂部の振動エネルギが他モードに比べ大きいこと,また,その被検体の形状において,き裂が存在しない場合の振動モードの(腹ではなく)節の位置にき裂が導入された場合に,き裂面間の相対変位が大きくなり,他モードに比べ発熱が大きくなることがわかった.さらに,疲労き裂以外にも,溶接部欠陥や複合材料の疲労損傷にも研究を展開し,いずれも検出可能であることを示した.また,大型構造物での実験も行い,その検査の可能性も示した. 本研究により,Sonic-IR法の高精度化,高能率化のための重要な方針が得られた.
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