関節運動器インプラントを必要とする患者(ロコモ)の急速な増加に伴い,安全性等に関する基本的機能を十分に満足しつつ,患者個々の骨格や骨質,症状等に合わせたカスタムメイドが求められている. カスタムインプラントの製造には,試作品を素早く作るラピッドプロトタイピングを応用した金属積層造形(Additive Manufacturing)が期待されている.材料的観点からは,チタン合金(Ti-6Al-4V)とコバルトクロム合金(Co-Cr)が股・膝関節の荷重支持部に適用されている. 本研究では,関節運動器の骨形状3D CADデータからチタン合金とコバルトクロム合金の3D造形カスタム関節運動器を造形し,短時間高速フレーム骨類似アパタイト(HA)溶射で耐疲労強度化プロセスの確立及び骨伝導能付与技術の一体化創製技術の構築を目的とする.具体的には,3D造形材には造形時の欠陥が残留する.加えて,骨伝導能に乏しい金属なので,骨と協調・融合する機能性の付与が不可欠である.短時間高速フレームHA溶射によるマルテンサイト変態で,組織の微細化と欠陥の除去で疲労強度・寿命の向上,併せて,擬似骨HAを核付け(極微量定着)した骨伝導機能付加カスタムメイド関節運動器の一体化創製技術の構築を目的とする. 本年度は,短時間高速フレーム溶射法で造形欠陥の除去及び骨伝導能を付与した人工関節運動器の疲労特性を擬似体液下で評価した.すなわち,き裂発生にポーラス構造や短時間HAフレーム溶射が及ぼす影響を,ヒトの歩行パーンを模擬した曲げと圧縮応力下で評価した.
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