研究実績の概要 |
(1)抵抗加熱法によって,ポリイミド樹脂(PI)フィルム(75μm)に対してFeとNiおよび,TiとNiを蒸着した積層膜を作製し,ガス透過度測定装置を用いてそれらの水素透過性能を評価した。PIフィルムに対してFe(1084μm)とNi(373μm)を蒸着して積層膜とすることによる水素透過係数およびその温度依存性に改善は見られなかったが,Ti(152μm)とNi(369μm)を蒸着することによって,水素透過度および90°C以下の温度域においてその温度依存性が増加した.この温度依存性は,PIの結晶化度の変化とTiNi合金の相変化の両者によると考えられる。 (2)メカニカルアロイング法により,Mg-Si合金を作製し,さらに,触媒としてグラファイト(Gr)を混合したMg-Si-Gr合金に対して,Si量の異なる4種類(5, 10, 15, 20wt%)を作製し,PCT測定法により水素吸蔵放出特性を評価した。測定時の環境温度が200℃と280℃では,4種類全ての供試材において水素の吸蔵が確認されたが,放出は確認されなかった。水素吸蔵量はSi添加量の増加に伴い増加し,200°Cでは15 Si wt%の時に2.47wt%,280°Cでは10 Si wt%の時に2.84wt%と最大となった.DSC測定により20 Si wt%の時に放出温度は366℃となり,MgH2と比較すると,約74°Cの低減となった。 (3)ポリプロピレンに対して膜厚(0.6,0.7mm)および結晶化度(約12%,約24%)の異なる4種類の試料を作製し,温度条件を変えて水素透過試験を行うことでポリプロピレンの水素透過度の温度依存性を評価した。全ての試料において水素透過度は温度上昇により大きくなった。ここで,0.1 mmの膜厚差において,水素透過度はほぼ同じ値となり,結晶化度の違が温度依存性に与える影響もなかった。
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