研究実績の概要 |
本研究では、金属材料の塑性加工法の一つである伸線(引抜き)加工に関して、ミクロスケールからの新しい技術展開となる「ナノ伸線加工」の可能性を追求する。(1)原子レベルからの微視組織制御、(2)ダイスとの潤滑性能向上、(3)破壊メカニズムなどの伸線加工・伸線材における諸問題を材料科学・計算力学アプローチによってミクロスケール側から理論的に取り扱う。主なる方法論は分子動力学(MD)シミュレーションおよびその関連技術であり、原子一つ一つの運動を直接計算して現象を理解していくという特色がある。 本年度は以下の成果を得た。 まず、上記(1)の研究項目について、セメンタイト分解などのパーライト鋼で生じると考えられるミクロ機構を理解すべく、前年に引き続きフェライトとセメンタイトの2層からなるパーライト鋼モデルを用いたMD計算モデルを用いて、2体間ポテンシャルとより高精度な多体間ポテンシャルでの結果を得て検討した(H29.6学会発表,H29.10国際会議発表,H30.5,6に学会発表予定)。また、ナノ伸線でのキーとなる転位構造の発生機構の解明とその制御に関して、サイズアップしたMDモデルを用いて転位増殖・反応の機構を検討した(H30.5,6に学会発表予定、H30.7月に国際会議発表予定)。 また、上記(2)に関して、伸線ダイスへナノテクスチャリングを付加し加工摩擦減少の可能性とその現象解明を行った(H29.5,11に学会発表,H29.10国際会議発表)。 さらに、上記(3)の項目について、MD解析のマクロバージョンとも呼ばれるPeridynamics理論の導入を進め、MDとの融合によるマルチスケール解析への発展を試みた。ナノインデンテーション試験などでMD計算と連携した弾塑性モデルの構築などを行い、今後の伸線加工への適用の見通しを得た(H29.9(2件)に学会発表、H29.10に国際会議発表)。
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