研究課題/領域番号 |
16K05995
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
坂田 誠一郎 近畿大学, 理工学部, 教授 (80325042)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 複合材料 / マルチスケール確率応力解析 / 多孔質材料 / 材料強度 / 微視的ひずみ場計測 / 信頼性設計 / 確率均質化解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,複合材料や三次元造形材料などの不均質な材料を対象とし,微視的なばらつきを考慮した新たな強度推定法を開発することを目的としている. 当該年度は,研究実施計画に則り,H29年度に引き続き(1)提案手法の非一様多変数変動問題への拡張,(2)三次元造形装置により作成した試験片の数値モデルの検討,(3)繊維強化複合材料の微視的ひずみ分布計測法の改良を行った. (1)については,H29年度の研究進捗を受け,繊維が数百本程度含まれる領域を単位構造とした場合のマルチスケール確率応力解析手法を開発した.開発した手法を通常のモンテカルロシミュレーションと比較し,精度及び計算コストの観点から有効性を検証した.(2)については,この時点までの研究が通常の均質化法の適用が可能であることを仮定していたため,さらに詳細な数値モデルを作成し適切性の検証を行うと共に,作製した試験片の詳細観察を行い,微視的なばらつきの確率変動について,特に自己相関の観点から調査を行った.その結果,本研究で用いている三次元造形装置では造形物の微視構造のばらつきに一定の相関が存在する可能生が明らかとなった.(3)については,H29年度に開発した手法において,複合材料の微視構造で観察される材料定数の不連続性を考慮可能とするための新たな手法を開発し,その有効性を検証した. さらに,最終年度の実施を想定していた提案手法の複合材料の強度推定への適用のために,平成31年度までに開発予定であった解析手法の開発を前倒しすることができ,シングルスケール問題では有用性を確認することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度時点で造形材料の変更により実験データ取得等に遅れが生じたが,その後追加実験により適切なデータを得るに到った.また,解析手法開発の面で,多数の強化繊維を含む領域での解析法がある程度確立できたこと,また実際の複合材料にみられるような繊維の規則配置からの大幅なずれに対しても対応できる解析手法の目処が立ったことなどから,計画より順調に進んでいる点もある. 一方で,材料強度の実験的検証に必要な複合材料の微視的ひずみ場計測法については,計測ノイズなどの影響について想定よりも困難が生じており,計画より若干遅れている. これらを総合すると,進捗状況としては概ね順調と判断するが,実験面でさらなる工夫が必要と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進については,H30年度に引き続き研究計画書に記載した内容に従い実施する予定である.特に解析面においては,当初想定されていた課題の一部に早期解決の目処が立ったため,粒子強化材への適用や,三次元造形材料や複合材料との定量的比較等により,開発している手法の有用性について検証を行う予定である. ただし,実験面についてはいくつか課題が明かとなってきている.今後の状況に依り,新たな対応も検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度予算では主に(1)造形材料の補充および(2)学会講演・成果発表旅費を計上していたが,(1)は前年度の残りおよび学内研究予算で足りたこと,また(2)も学内旅費予算で足りたことから差額が生じている.
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