研究課題/領域番号 |
16K05996
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
李 志遠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (70509710)
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研究分担者 |
王 慶華 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 研究員 (20726856)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マルチスケール / モアレ縞 / サンプリングモアレ法 / 変位・ひずみ / せん断ひずみ / フーリエ変換 / 位相解析 / 時空位相シフト |
研究実績の概要 |
本研究では、モアレ現象及び縞画像の位相解析技術を利用した光学的マルチスケール変位・ひずみ計測手法を開発し、CFRP複合材料および異種構造材料での損傷を実験的アプローチによりそのメカニズムを解明しようとするものである。初年度では専用のマルチスケール格子の設計と特注作製および高精度な全視野変位・ひずみ分布を測定できる新しい計測手法の原理を確立した。以下の研究成果が得られ、特許出願・論文発表・学会発表を行った。 1.異なる空間周波数を有するマルチスケール格子を新たに設計した。大視野と小視野両方を最適なモアレ観察できるように、750nmピッチの小格子と15ミクロンピッチの大格子を混在したマルチスケール格子のモールドを作製した。作製したモールドを試料表面にマルチスケール格子を付与し、同一レーザー顕微鏡で異なる倍率観察を行った。その結果、それぞれの観察倍率で2方向のモアレ縞画像をサンプリングモアレ法より生成できることを確認できた。特に小視野での微細格子からきれいなモアレ縞画像を生成するために、フーリエ格子変換法を導入した。これにより、材料全体のひずみ集中部と界面での高分解能のひずみ分布を同時に評価する見込みができた。 2.2次元格子の2方向同時解析によるせん断ひずみ測定法を開発した。材料表面の損傷評価を行ううえで重要とされている最大・最小主ひずみ分布をより高精度で測定できる光学的方法を新たに考案した。本開発手法は、従来評価困難だった複雑な変形挙動を示すCFRP複合材及び半導体チップ等の異種材料間での損傷メカニズムを実験的アプローチにより明らかにするうえで極めて重要と考える。 3.時系列で撮影された連続した実験画像を用いて、新たに時空位相平均法を考案し、その有効性をシミュレーションより確認した。本手法はひずみ算出の際に誤差の原因となる外来ノイズの影響を低減できる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、構造材料を対象に広視野で試料全体のひずみ集中部を特定し、その後ひずみ集中部に着目し、高倍率での観察から高精度なひずみ評価ができる光学的マルチスケール計測手法を開発するものである。初年度では、レーザー顕微鏡の下で異なる観察倍率でマルチスケール評価できるように、新たにマルチスケール格子の設計と作製を行った。実際に顕微鏡で観察を行い、大視野および小視野での格子を観察し、それぞれの倍率で縞格子画像の位相解析ができることを確認できた。またより高精度なせん断ひずみ分布計測ができるように、新たな2次元格子を用いた2方向変位同時解析手法により、高精度なせん断ひずみ計測法を開発した。加えて、実験最中に連続的に撮影した格子画像を活用した時空位相平均法の計測原理を新たに考案し、シミュレーションよりその有効性を確認した。これらの達成は当初の計測通りである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は前年度の研究成果を踏まえて、次の2項目の研究を実施し、CFRP複合材の3点曲げ試験と半導体フリップチップの加熱試験により、それぞれの異種接合材料の損傷メカニズムを明らかにする。 1.3点曲げ試験によるCFRP複合材の損傷評価 8層または16層のCFRP試験片を用いて、機械的3点曲げ試験を行うことで、上部では圧縮、下部では引張の損傷を評価する。特にCFRPの損傷破壊の際のマトリックスクラック・層間剥離・繊維破断の3つにそれぞれ着目して、ひずみ分布からこれらの相互作用を明らかにする。 2.加熱試験によるフリップチップのアンダイーフィル材の熱ひずみ分布 フリップチップを斜め45度に切断した断面に初年度で作製したマルチスケール格子を付け、加熱チャンバより室温から150℃まで加熱した際の熱ひずみ分布を異なるスケールで解析する。
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